出版社内容情報
家の事情にわが身の事情、用心棒の赴くところ、ドラマがある。青江又八郎は二十六歳、故あって人を斬り脱藩、国許からの刺客に追われながらの用心棒稼業。だが、巷間を騒がす赤穂浪人の隠れた動きが活発になるにつれて、請負う仕事はなぜか、浅野・吉良両家の争いの周辺に……。江戸の庶民の哀歓を映しながら、同時代人から見た「忠臣蔵」の実相を鮮やかに捉えた、連作時代小説。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
531
【海坂藩城下町 第10回読書の集い「冬」】わたしとしたことが!シリーズのうち、肝心の第1作目を読んでいなかった。又八郎の人となり、彼を取り巻く環境などなど、他3作を読んでいるので今作で改めてなぞったような感じ。相変わらずの男振り、剣も立ち常に武士たるものの振る舞いを忘れず、女子どもには優しい。当然女子にはモテモテなのである。そうか、佐知とはこのように知り合ったのか。口入れ屋の吉蔵や同じく浪人の細谷など、のちのち長い付き合いになる脇役もとてもいい。間違いなく著者の代表作のひとつ。2025/01/26
ヴェネツィア
233
青江又八郎を主人公とした、シリーズ第1作。藩内の陰謀に巻き込まれたために脱藩を余儀なくされ、江戸で、はからずも用心棒暮らしをする又八郎を主軸とした物語。しかし、本書は同時に「忠臣蔵外伝」という、もう一つの顔を持つ。大石以下の浅野家浪士たちとの接点をしだいに深めながら、又八郎の、そして義士たちの物語は同時に進行してゆく。討ち入りの夜の描写はさりげなくなされるが、それだけに想いは深い。エンディングはハッピーエンドなのだが、細谷からの手紙―「吉蔵ともども、来るべき再会を祈り上げ候」―は、意味深長だ。2012/07/07
yoshida
202
青江又八郎は筆頭家老大富丹後の藩主毒殺の密謀を知る。許嫁である由亀の父、平沼に密謀を打ち明けるも、平沼は大富派であり青江はやむ無く彼を斬り江戸に出奔。用心棒稼業で糊口をしのぎつつ大富の送る刺客と対決する。並行して「忠臣蔵」事件も流れ、青江は赤穂浪士、吉良家ともに結びつく。連作短編の形を取りながら、江戸の庶民の暮らしや悲哀、歓びを描く。藤沢周平氏の作品として、やはり安定した面白さを持つ。最終章で青江は藩に戻り録も戻る。青江を待っていた祖母と許嫁の由亀にほっとする。残り3作。事件は続く。読むのが楽しみな作品。2015/12/11
ちょこまーぶる
142
以前このジャンルの本を読んだ時は、苦手意識を持ってしまったが、今回は非常に読みやすくて苦手意識を少し克服できたような気がする。用心棒又八郎の請け負う仕事の内容や生き方・考え方からは26歳の青年とは思えないから驚きである。又八郎が今の時代にタイムスリップしたら・・・って想像したら、刀を振り回してばかりいるのではないだろうか。それはそれで、一冊の本が書けそうな感じもするが。2012/05/13
kinkin
139
予想以上に面白く読むことが出来た。彼の市井ものや武家ものとは違う味付けがなんとも心地よい。時代劇のハードボイルドといってもいいと思う。主人公の青江又八郎、口入屋の吉蔵、又八郎と同じく口入屋の世話になる細谷源太夫、特に又八郎と源太夫のコンビはまさに映画のヒーローのような動きと緩急つけた会話が読ませてくれる。そして「忠臣蔵」の話を並行して進めながら絡ませていく著者の腕が冴えわたる名人芸、。この続編も楽しみだ。2016/05/05