内容説明
日本の詩人として、誰しも名を逸することができないはずの柿本人麿の生涯は、正史から抹殺され、その行方は杳として知れず、その絶唱も時代を経るとともに誤読されてきた。賀茂真淵の人麿解釈以来、近代的合理主義によって歪曲され、見失われていた古代国家の凄惨な真実、宮廷第一の歌人人麿の悲劇の生涯と、鎮魂の歌集『万葉集』に新たな光をあてる、梅原日本学衝撃の画期的論考。
目次
第2部 柿本人麿の生(承前)―賀茂真淵説をめぐって(年齢考(承前)
官位考・正史考
『古今集』序文考)
感想・レビュー
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chantal(シャンタール)
83
下巻は主に江戸時代の学者、賀茂真淵の「古今集」序文についての反論。人麿の悲劇的な最期が上巻で明らかになり、なぜそうなったのか?がわかるかと思ったら、万葉集全体の話になってしまって、ちょっと肩透かし。色んなことを論証するために古事記やら桓武天皇の死やら、「それ、人麿と関係あるの?」と思うような事も詳細に語られ(そう思ってるよね?と先生にもお見通しなんだが😅)、着いて行くのが大変だった。万葉集、決してほのぼの歌集ではないよね、奈良時代ってドロドロだよね、藤原氏強烈だよねと言う事については改めて納得した。2021/06/15
NAO
64
なぜ、人麿は流されることになったのか。なぜ、人麿の名は正史に記されていないのか。全国各地に人麿を主祭神とする神社があるのはなぜか。下巻では、人麿がどのようにときの政権と関わり、どうして流罪になったかについて考察していく。人麿の謎の死から、古事記や万葉集の成立目的までをも解き明かそうとする壮大な考察。それが正しいのかどうかはわからないが、なかなかおもしろい発想だと思う。2020/04/11
あやの
42
重量級の読みごたえ!上巻の斎藤茂吉論破に続き、何とかして賀茂真淵と契沖の説を覆そうという凄まじい熱量を感じた。膨大な資料から柿本人麻呂の姿を作り出していくので、説得力に富む展開である。もし梅原説が立証されたら本当に面白いだろう。残念なのは梅原氏自身が本文で言っているように、肝心の「人麻呂刑死」を示す資料が出てこないこと。その他も推測に頼っている部分が多々あること。古代のことゆえ、立証はできないのだと思う。でも、確かに「こうだったら面白いのに」というロマンを掻き立てる本だと思う。2024/10/24
優希
40
柿本人麿の生涯が何故歴史から消えたのか、その謎を追求していくと思いきや、万葉集へと話が流れていったのであれ?という感じでした。人麿と関係があるのかどうか不明なことばかりが検証され、肩透かしを食らった気分です。2024/04/30
fseigojp
23
か寄りかく寄る 玉藻なす 寄り寝し妹を 露霜(つゆしも)の 置きてし来れば この道の 八十隈(やそくま)ごとに 万(よろづ)たび かへり見すれど いや遠(とほ)に 里は離(さか)りぬ いや高(たか)に 山も越え来ぬ 夏草の 思ひ萎(しな)えて 偲(しの)ふらむ 妹が門(かど)見む なびけこの山2016/05/08