内容説明
藩主の心変わりから暇を出された側室・お市の方は、家臣・笹原与五郎の妻となる。だが数年後、お市の生んだ子が世継ぎとなり、与五郎は妻の返上を求められる。藩命に従うべきか、それとも…(「拝領妻始末」)。温和な性格で武芸も不得手な男に上意討ちの命が下る。周りは心配するが男は秘策を練っていた(「上意討ち心得」)。家や主君、慣例に縛られる武士たちの悲劇を描く傑作短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
タツ フカガワ
7
映画『切腹』の原作「異聞浪人記」をはじめ8話の短編集。ほとんどが“お家の面目”という都合のよい題目の中で犠牲になった人たちを描いたもので、粒選りの作品ばかりでした。とくに「拝領妻始末」「その心を知らず」「綾尾内記覚書」がよかった。そんななかで爽やかな印象だったのが「小隼人と源八」。アンソロジーでは何度か読んでいましたが、丸ごと1冊はこれが初めて。こんなに面白いとは。2019/11/09
りえぞう
2
◎。ああ、あの仲代達矢の『切腹』の原作がこれだったのか! と膝を打ったりして。それにしても鍋島藩、ちょっとやばいんじゃないかな、スクエア過ぎて。そりや 化け猫も出るわ。武士の世、本当にここまで四角四面だったのかしら。不幸な武士階級。2024/12/14
よっちゃん
2
身分の格差が今と比べて大きすぎる。2013/08/25
lastsamurai
2
時代小説で文句なしNO1。どの作家も勝てない。 このような武士の世界を描いた作品はかつてなしです。2015/03/23
アキラ
2
どの短編も「命」というものが、等しく、新鮮で、刹那的で、尊く、美しく思えてならなかった。役目と心得たり、意地だったり、死を選ぶ理由はさまざまだが、最期は誰もが未練なく清清として潔い。肉体の痛みなど、どうと気にすることもないく、思い思いに死んでいく。気にかけるのは藩の面子だったり、親類縁者への気遣いだったり、自分自身の気持ちだったりと精神的なものばかりだ。肉体へ意識が向くことはあまりないような気がする。常に一つの精神をもってで行動している。そうした生き様に年齢、性別関係なくぞくぞくさせられた。他の作品も読ん2013/02/15