内容説明
果たし合いなど廃れていた江戸時代末期に、些細な口論から果たし状をつきつけられた武士の困惑(「蛍橋上流」)。藩主の意に背き、浪人の娘を嫁にとった親子の悲劇(「花散りて後」)。斬るなかれ、斬らるべし―という極意を得ていた剣の達人が、主君から放し討ちを命じられ、悩んだ末に思いついた秘策とは(「放し討ち柳の辻」)。武士道無残を峻烈に描き切った、緊張感みなぎる作品集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
タツ フカガワ
6
7話の短編を収録。なかで好きなのは「寒月雪見橋」。ある日友野周平の家に、同じ道場に通う浅野右伝太が果し合いを申し込んできた。過日、自分の悪筆を嘲笑したのがその理由。そんな理由でと驚く周平だが、剣で勝ち目はない。そこである奇策を胸に果し合いに臨む。その奇策が面白い。2019/11/16
鳥朗
2
面白かったー! 蛍橋上流、寒月雪見橋、放し討ち柳の辻、この3作品が特に良くて、なんだか久しぶりに時代小説読んだーってなりました。 うーん、しかし私は、歴史上の人物を扱った小説は苦手なものが多いんだなぁと再認識もしました…(苦笑)2018/03/27
BIN
2
江戸時代の武士の果たし合い等を描いた5作品と戦国時代もの2作品の短篇集。江戸時代ものの方が出来がよく「蛍橋上流」、「寒月雪見橋」の2作品が好みの作品。戦国ものとしてはタイトルにもなっている「鬼哭の城」が備中三村家を描いた作品で、非情な裏切りにより無残にも毛利家に滅ぼされるところが虚しいところでした。あまり書かれてないところでもあり、それはそれで面白くはあった。2014/05/26
renren
2
この作者のものは、大河もの(著名人物の伝記や事件の裏を描くもの)よりも創作色の強い「無名の一武士」を描いたもののほうが佳作が多い。著名人物ものは正確性や史実の描写を細かくするあまりに焦点がぼけたり出来事の時系列がわからなくなったりしがち。「蛍橋上流」「放し討ち」が秀。特に後者。2010/06/23
introduction
1
時代物は苦手意識があってなかなか読まないのだけれど、この本は縁があって読破。日本史に疎い私でも読みやすく、心が動かされる短編集だった。今も昔もきっと人の心は複雑で温かい。2021/01/22