内容説明
香港・マカオに別れを告げてバンコクへと飛んだものの、どこをどう歩いても、バンコクの街も人々も、なぜか自分の中に響いてこない。“私”は香港で感じたあの熱気を期待しながら、鉄道でマレー半島を南下し、一路シンガポールへと向かった。途中、ペナンで娼婦の館に滞在し、女たちの屈託のない陽気さに巻き込まれたり、シンガポールの街をぶらつくうちに“私”はやっと気がつくのだった―。
目次
第4章 メナムから―マレー半島1
第5章 娼婦たちと野郎ども―マレー半島2
第6章 海の向こうに―シンガポール
対談 死に場所を見つける(高倉健;沢木耕太郎)
あの旅をめぐるエッセイ2
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こーた
233
事ある毎にお金のはなしが出てくる。無理もない。いつたどり着くとも知れない長旅だ。節約するのは当然である。とはいえ物価は安い。何も持たぬ若者でも、何とかやっていけるくらいには。かつて我々は出かけていく側だった。それがいまはどうか。この国へやってくる若者のほうが、ずっと多いのではないか。人生は旅と似ている。目的地の見えない、いつ終わるとも知れぬ長旅だ。お金だっていくらかかるかわからない。だから節約する。外を見に出かけていく余裕なんてないのだ。いまや私たちの国は、自由を選択する自由さえ失いつつある。⇒2020/09/17
あきぽん
67
新潮文庫の100冊2020より。娼館にも泊まる予定のない旅。汗や街の臭いが伝わってくる素晴らしい文章で、アジアの奥深くへ脳内をいざなっていくれる。惜しむらくは古いこと、でも巻末の高倉健との対談も面白い。2020/09/05
アイシャ
45
マレー半島、シンガポール編。香港での心の沸き立つような体験を胸に、沢木さんが次に選んだのはバンコク。ここから南下していくのだが、ペナンの売春宿での女性たちやそのヒモの男性たちとの交流を除くと、あまりワクワクするような感じがない。どこをどう歩いても、ここだと思う場所にぶつからない。旅に少しずつ退屈していく。そしてカルカッタに向かおうと決める。巻末の高倉健氏との対談が素晴らしかった。もう40年も前のものだが、スターの健さんがここまで深い話をするとは沢木さんへの信頼からだろう。2024/02/18
chanvesa
24
バンコクやシンガポールよりも、ペナンのとりこになりかけるのが面白い。旅での人との関わり方が、また会いましょうと言いつつも二度と会わない可能性が高いことの気楽さにあるのが醍醐味なのかもしれない。ペナンの娼館のような安宿をあとにするきっかけだったのは、楽しく会話をしていたマリという娼婦に東京での生活のあてにされたことが、めんどくさくなったのだろう。沢木さんのように旅先で知らない人と話すきっかけを持つほど旅慣れてもいないし、一人になりたいから旅に出たいと考えるような人間には、数年間旅に出る事は想像を絶している。2023/12/28
山猫
19
単なる逃げ、モラトリアムで、上から目線のつくづくいけすかない男が、タイの「涅槃仏」を「拝まず」に「見て」、独立直後のシンガポールを意味もなく期限を切って旅をする。性根が卑しい上に自覚がないから、平気で人にたかる。「滞在させてもらっている」国への敬意や感謝が全く感じられず、傲慢そのもの。チュラロンコーンが不潔に見える原因が学生の食べ残し?あれは「施し」で、香港あたりの食べ残しとは全く意味が違うのも知らんのか?此奴は香港のような濃い味の国に麻痺して、他国の淡い味の良さが分からなくなっている 。2020/10/10
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