内容説明
取り憑かれたようにバカラに打ち込む伊津航平。中国人を装ってマカオに長く暮らす劉。心に深い傷を負いながら航平と惹かれ合う娼婦の李蘭。それぞれに背負う闇の淵を互いに覗き合う三人。そして物も言わずその中心に鎮座するバカラとその謎。もっとも純粋な生き方を求めた先に待つのは、破滅だけなのか…。雷のように交錯し、薔薇の花弁のように砕け散る三人の運命は何処へ向かうのか。カジノの王バカラに挑む男たちの熱い物語。
著者等紹介
沢木耕太郎[サワキコウタロウ]
1947年、東京生れ。横浜国大卒業。ルポライターとして出発し、’79年、『テロルの決算』で大宅壮一ノンフィクション賞、’82年に『一瞬の夏』で新田次郎文学賞、’85年に『バーボン・ストリート』で講談社エッセイ賞を受賞。’86年から刊行が始まった『深夜特急』三部作では、’93年、JTB紀行文学賞を受賞した。’06年に『凍』で講談社ノンフィクション賞を、’14年に『キャパの十字架』で司馬遼太郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kawa
32
とある女性との逢瀬が、かの地の暗黒集団に睨まれる波乱。救いの神となった劉や李蘭の謎も、その事件とともに明らかに。サーフィンに、写真に、そしてバカラ 。~ 日本に、ハワイに、バリに、マカオに、そして日本。航平の心の軌跡も徐々に明らかに。ページをめくる手にも汗が…。2021/08/17
Y2K☮
30
著者のノンフィクション「一瞬の夏」は途中で閑話休題的にアリの試合を現地まで観に行くエピソードが挟まれる。主題をペンディングして一息入れつつ、カシアス内藤の復活に対する期待と不安を間接的な形で仄めかしていた。この巻で描かれる様々な人間模様もその手法だろう。結果的に主人公・伊津航平がどういう人物か、なぜバカラに夢中になったのかがぼんやりと浮かび上がった。だがこれは創作だ。3部のどこかで必ず著者と航平を決定的に分ける局面が訪れる。作家はその分岐点で選ばなかったルートの結末を作品内で再現できるのだ。待ちきれない。2018/07/17
マリリン
23
少しずつ明かされていくそれぞれの闇、闇を持つ事で人間としての奥深さが出てくるのだろうか。― もう日本に帰れなくなりますよ、ー バカラは地獄です。雷鳴編、読み進める程に裏社会の怖さを味わった。そして日本に帰国し再びカメラを手にした航平。モデルのユリアとの会話がさざ波のように公平の心の中を揺るがす。劉と季蘭が待つ、マカオに行く日はいつになるのだろうか。時空の波、どんな波がくるのか、どのように乗っていくのか。2019/08/11
うぃっくす
7
バカラ必勝法のようなものはあり得ないと思っているんだけどそれがあるのではないかと思わせてズブズブになってしまう中毒性はどこからくるんだろうね。2024/09/01
kokekko
4
すごい勢いで読んでしまう。ギャンブルには縁のない生活をおくってきたので「一発あてたい人がやるもの」というイメージが更新されることなくきてしまったが、この小説を読むと、そんな単純なものではないのだなと思わされる。勝つか負けるかは正直どうでもいい(でも欲は捨てられず、目が曇る)というさわやかさが、ギトギトしそうな題材の小説をさわやかに読ませてくれる。『波』の話がようやく出てきた。続きも読む。2018/08/17