内容説明
男はその朝、サウジアラビアの砂漠に雪を見た。大晦日の夜、女は手帳に挾み込む緊急連絡先の紙片にどの男の名を記すべきか思い悩む。「今」を生きる彼もしくは彼女たちの、過去も未来も映し出すような、不思義な輝き方を見せる束の間の時…。生の「一瞬」の感知に徹して、コラムでもエッセイでも、ノンフィクションでも小説でもなく、それらすべての気配を同時に漂わせる33の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
111
沢木さんの著作はかなり読んできたつもりでしたがこの本は未読でした。朝日新聞に連載されたようでドキュメントかあるいはエッセイかショートストーリーを思わせるような感じでした。短いものや結構長いものもあったり、国内あるいは海外でのできごとなども記されています。普通の人々の日常にあるようなことをうまく読ませてくれます。私は以前に読んだボブ・グリーンの「アメリカン・ビート」を思い起こしました。再読しようという気になりました。2023/04/10
じいじ
84
おもしろい! 読みながら、これは小説ではない、エッセイでもないし…と、ちらっと思った。でも、そんなことはどうでもいいことだ。10頁ほど33篇の一話一話が、味わいがあって面白い。文章の達人・沢木耕太郎が、未知の世界にいざなってくれます。初読みの今回は一気に読み終えたが、再読は一篇ずつゆっくりと味わってみたい。2021/08/09
遥かなる想い
70
まとめて読む本ではなく、毎日少しずつ読んだ方がよい。コラム的な本。2010/05/08
いちろく
46
頂いた本。様々な生き様が描かれた33の物語。何かのキッカケで生き方が変わる人もいれば、新たな人生を切り開く人もいるし、運命に翻弄されたまま生きている人もいる。自分の人生を決めるのは自分なのだから正解は無い。珍しく毎日少しずつページを捲った作品であり、初めて読んだ沢木さんの作品でした。今の私にはジックリと沁みる内容だった。感謝です!2017/05/15
糜竺(びじく)
43
さすが沢木耕太郎っていう、何か心に突き刺さる33の物語でした。引用「頂に登ろうともせず、しかしだからといって人生から降りているわけでもない。当たり前の人生を当たり前に生きている。だが、当たり前の人生を当たり前に生きていくという事の、何と難しい事だろう。ところが彼は、それをごく自然に、しかもいきいきと生きているようなのだ」「多田さんは、あなたが手紙で書かれているように、「頂に登る」のではなく「麓で遊ぶ」事の楽しさを身をもって教えてくれる存在でした。多田さんこそは、生きる事の達人、のはずだったのです」2016/05/02