出版社内容情報
「外国の音楽をやるためには、その音楽の生まれた土地、そこに住んでいる人間をじかに知りたい」という著者が、スクーターでヨーロッパ一人旅に向かったのは24歳の時だった……。ブザンソン国際指揮者コンクール入賞から、カラヤン、バーンスタインに認められてニューヨーク・フィル副指揮者に就任するまでを、ユーモアたっぷりに語った「世界のオザワ」の自伝的エッセイ。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まこみや
129
貨物船で渡仏、ギターを背負い日の丸をつけたスクーターに跨って欧州行脚の旅に出る。悲壮な覚悟とでもいえそうな出立ちだが、文章からはそんな大仰な気概は微塵もない。コネもない。頼るべき知人も師もいない。懐も乏しい。ナイナイ尽くしの中で青年にあったのはたった二つのことだ。しかしその二つは飛切りのものを持っていた。一つは音楽的才能。飛び入りで出場したコンクールに連戦連勝することからもその圧倒的才能は明らかだ。もう一つは、屈託がなく楽天的で人懐っこい性格ー柔軟でかつ頑固な心だ。その二つが青年を小澤征爾にしたのである。2024/06/26
新地学@児童書病発動中
128
世界的な指揮者小澤征爾の青春記。素晴らしい作品だった。気概に満ちてユーモアたっぷり。ヨーロッパやアメリカの社会や文化に対する洞察も鋭い。一番感動したのは、音楽を通して、小澤氏が日本人の枠を超えていくところだ。生まれた国は異なっていても、音楽があれば人は一つになることができる。この本はそのことを証明している。日本から来た無名の青年を素直に受け入れるフランスの人達の懐の深さにも感激した。日本人は日本人であることにこだわりながら、西洋の文化を深く学ぶことで真に成熟できると思う。この本はその証明かもしれない。2018/07/06
まふ
125
伝説化されたとも言える小澤征爾の若き日の音楽武者修行記録。3読目(多分)。何度読んでも面白い永遠の青春記である。ここで展開されるのは、見事な「小澤家の団結力」、カラヤン、ミュンシュ、バーンスタインを納得させた小澤の「天才」、その天才を抽き出させる「超人的な集中力」、全く自然体で人懐っこく、誰とでもトモダチになれ、味方につけることのできる「圧倒的人間力」、そして全ての事件をプラスに換えさせる「絶大な強運」などである。没後記念として読んだが、若き日から死ぬまで変わることのなかった人物像に改めて感銘を受けた。2024/08/04
HIRO1970
116
⭐️⭐️⭐️今はもうすっかり大家・大御所とも言える日本の誇る音楽の第一人者である小澤征爾さんですが、まさに書名通りの武者修行時代の最初の3年間の24〜26歳の頃の様子が書かれています。文筆家ではないので、文章力はイマイチですが、それを補って余りある非常に疾走感と勢いのある内容に圧倒されました。前々から偉ぶらない出来た人だなとは思っていましたが、家族そして友人想いの優しさがズバ抜けて強い人である事が改めてわかりました。大勢の人をまとめる指揮者のスキルに通じる才能が随所に感じられました。オススメです。2014/04/15
あすなろ
107
26歳の小沢征爾氏が書いた2年半の修行旅。スクーターを唯一の財産として貨物船に乗り、マルセイユからパリ、仏国内、米、独、再び米と廻った。当時は画期的だっただろうが今でも充分画期的、否、刺激的である。若者よ海外へと書かれているが僕でも未だに海外へ少し行くだけでも充分な刺激を受ける。そして、眼での音楽家の話、ミンシュやカラヤンの話等々、とても面白く読了したのであった。長年読みたいと思っていた本であったが、やっと読めた!若さ溢れる本で書き込み自体は物足りなさあるが、そこは差し引いて考えても充分な一冊であった。2020/04/20