出版社内容情報
ぼくの記憶は80分しかもたない――あまりに悲しく暖かい奇跡の愛の物語。
[ぼくの記憶は80分しかもたない]博士の背広の袖には、そう書かれた古びたメモが留められていた──記憶力を失った博士にとって、私は常に“新しい”家政婦。博士は“初対面”の私に、靴のサイズや誕生日を尋ねた。数字が博士の言葉だった。やがて私の10歳の息子が加わり、ぎこちない日々は驚きと歓びに満ちたものに変わった。あまりに悲しく暖かい、奇跡の愛の物語。第1回本屋大賞受賞。
内容説明
「ぼくの記憶は80分しかもたない」博士の背広の袖には、そう書かれた古びたメモが留められていた―記憶力を失った博士にとって、私は常に“新しい”家政婦。博士は“初対面”の私に、靴のサイズや誕生日を尋ねた。数字が博士の言葉だった。やがて私の10歳の息子が加わり、ぎこちない日々は驚きと歓びに満ちたものに変わった。あまりに悲しく暖かい、奇跡の愛の物語。第1回本屋大賞受賞。
著者等紹介
小川洋子[オガワヨウコ]
1962(昭和37)年、岡山県生れ。早稲田大学第一文学部卒。’88年「揚羽蝶が壊れる時」で海燕新人文学賞を受賞。’91(平成3)年「妊娠カレンダー」で芥川賞受賞。2004年「博士の愛した数式」で読売文学賞、本屋大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 8件/全8件
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
1963
実に感動的な作品だ。そこはかとない神秘性を湛えた冷たい抒情、というのが私のイメージする小川作品なのだが、ここでは何ともホットで、ハートウオーミングな物語が展開する。完全数を背番号に背負った江夏とタイガースがプロットの展開に絡む、そのスピード感もまた絶妙だ。その一方で、静かな諦観が込められたエンディングも素晴らしい。数学と小説という、およそ相入れそうもないファクターを見事に結合させ、結実させた稀有な成功例だろう。小説の新しい可能性の一端を拓いたと言ってもいいかも知れない。2013/09/03
ヴェルナーの日記
1224
一見すれば、障害を負った元数学博士と、彼を世話する家政婦に、その息子という3人の心の交流を描いた物語に見える、しかし、その先に博士と別宅に住む義理の姉という隠された繋がりを、そこはかとなく描いている奥行きのある作品に仕上がっている。まさに今という瞬間の現在を生きている博士と、それ取り巻く主人公の私、そして息子のルート。これに対し、過去を生きる健康だった頃の博士と義理の姉という対比が、とても計算されつくした物語の構成になっていて、読者の心を響かす一冊。仄かな苦味と甘酸っぱさを感じされてくれる作品だと思う。2015/10/23
サム・ミイラ
1208
読了までひと月かかった作品でした。読み終えるのが勿体なくて毎日少しづつ読んでいこうと決めたからです。私にとっては初めての読み方でした。母と息子そして記憶に障害を持つ博士の毎日を淡々と綴った本当に何でもない話。でも読むたび泣いてしまうほど穏やかで温かく優しさに満ちた作品で、私にとっては疲れた心に響く鎮静剤みたいな本。著者の人間に対する慈しみと阪神タイガースへの愛情が随所に溢れる名著。この小説だけはいつも手元に置いています。ちなみに著者は江夏と亀山が好きでたまらないようです(笑)2014/09/06
HIRO1970
1086
⭐️⭐️⭐️小川さんはお初で題名に惹かれて手に取りました。最近ワインと中華料理のちょっとしたマリアージュを堪能する機会がありましたが、本作での婚姻は数段上のレベルでタイガース時代の江夏豊と高等数式のマリアージュというまさに想像を軽く超越したものでした。このユーモアのセンスは間違いなく関西圏の血が底流に流れている底堅さを匂わせてはいますが、全体としては女性らしい淡く繊細なタッチで博士が発する緊張感が常に途切れずに続いていく何とも不思議な作品でした。80分しか持たない記憶でも数式なら解けるし、幸せも掴める?2016/01/27
ehirano1
1070
うぅ~~~ん、確かに美しい。だがしかし、だがしかしですよ、博士がいくら記憶が80分しかもたないとはいえ、ポストイットを体中(もちろん肌ではなく服に)に貼るシーンが、もはや人間としての尊厳を完全に無視しているように扱われている感じが強く印象に残ってしまい私には大変ショックでした。2023/03/10