内容説明
僕の命の残りをあげるから、おばさんはその分、長生きしてください―知覧特攻基地の隊員たちはこの上なく美しく、限りなく哀しい言葉を遺して空に散っていった。その散華は国家や天皇のためではなく、可愛い妹、敬愛する父母、愛しい恋人のための勇敢な飛翔であった。そのあまりにも純粋で無垢な魂の呻吟を、手紙、日記、遺書、関係者の談話により現代に刻印する。記録文学、不滅の金字塔。
目次
特攻基地、知覧ふたたび―序にかえて
心充たれてわが恋かなし
取違にて
海の自鳴琴
第百三振武隊出撃せよ
サルミまで
あのひとたち
祐夫の桜輝夫の桜
海紅豆咲くころ
母上さま日記を書きます
雲ながれゆく
父に逢いたくば蒼天をみよ
約束
二十・五・十一 九州・雨 沖縄・晴のち曇
背中の静ちゃん
素裸の攻撃隊
惜別の唄
ごんちゃん
“特攻”案内人
魂火飛ぶ夜に
特攻誄―あとがきにかえて
著者等紹介
神坂次郎[コウサカジロウ]
1927(昭和2)年、和歌山市生れ。’82年『黒潮の岸辺』で日本文芸大賞、’87年『縛られた巨人―南方熊楠の生涯―』で大衆文学研究賞を受賞。2002年南方熊楠賞、’03年長谷川伸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Shoji
58
2019年現在、戦後74年になります。つまり、74歳以上の人は戦争体験者ということになります。超高齢化社会の今、多くの方がまだお元気で過ごしていらっしゃると思います。その戦争体験者の方が特攻について綴っています。紛うことなく、ノンフィクションです。多くの手記が綴られていますが、特に、「"特攻"案内人」、「魂火飛ぶ夜に」という章では絶句しました。戦争を風化させないためにも、74歳以上の方には戦争の語り部として、いつまでもお元気で過ごして欲しいと思いました。 2019/08/22
ちゃとら
57
知覧特別隊員たちの軌跡、実話だけに読むのが辛く苦戦しました。終戦間際の苦肉の策、特攻隊。集められた若者たちは初めから軍人になりたかったわけではない。そして数時間後に確実に死ぬ!命令を待つ。自殺では無いのに、どれだけ苦しかったことか。特攻の世話係の14歳前後の女性達も、次々に散るために各地から集められやってくる若い兵隊さんを、心を込めてお世話して、死への道へ送り出す。戦争という悲劇。日本の最後のあがきで犠牲になった多くの命。若い人達に読んでほしい一冊です🙏2019/08/11
テツ
11
人間は死んだら終わりなのだ。どんなにその直前に崇高な精神に至れようとも、純粋な想いを母や子に抱こうとも、死んでしまったら終わりなのだ。そんなこと誰でも知っている筈なのに費用対効果(人間の生命に対して使いたくない言葉だけれど)も最悪な特攻という愚策を当時の若者たちに強いていた。彼らの生命にも魂にも敬意を払う。遺した言葉に涙もするし、鎮魂のためになるべく善く生きようと背筋が伸びるし、この国が平和に続くように願う。その上でこれは無駄死にだったと、何の意味もなかったと、刻まなければいけない。感動だけではいけない。2023/08/27
デージー
3
手紙、日記が中心となるが、文章もそうだか、内容もサラリと隊員の潔い心情を描いたもので読みやすい。19話それぞれの隊員のドラマがある。純粋で戸惑いはあれど迷いのない様子は現代との違いを感じる。隊員の方たちは知覧の人々とひと時交流を持つようで送り出す村の人々の気持ちも胸を打ちます。2020/01/14
takao
2
ふむ2025/04/06