内容説明
犯罪社会学者の火村英生は、友人の有栖川有栖と旅に出て、手違いで目的地と違う島に送られる。人気もなく、無数の鴉が舞い飛ぶ暗鬱なその島に隠棲する、高名な老詩人。彼の別荘に集まりくる謎めいた人々。島を覆う死の気配。不可思議な連続殺人。孤島という異界に潜む恐るべき「魔」に、火村の精緻なロジックとアクロバティックな推理が迫る。本格ミステリの醍醐味溢れる力作長編。
著者等紹介
有栖川有栖[アリスガワアリス]
1959(昭和34)年、大阪生れ。同志社大学卒。書店勤務を経て、’89(平成元)年『月光ゲーム』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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W-G
457
この作品は初読。舞台設定は火村シリーズにしては異色だが、読んで見ると安定の作家アリス物。読者が期待するような不穏な空気やサスペンスは若干足りない気もするが、電話線が切断された理由は面白かった。良くも悪くもこの作者は、地に足のつくところに落ち着こうとし過ぎる傾向があるが、この作品の空気感と現実的な解決のギャップは嫌いではない。ただ、もっと視界が一変するような工夫も欲しかったと感じるのは贅沢だろうか。島に集まった人たちの秘密も、盛り上げ方の割にはちょっと肩透かし。そこまでひた隠しにするようなものではなかった。2017/01/16
🐾Yoko Omoto🐾
179
孤島のクローズドサークルを舞台にした作家アリスシリーズ。物語自体に派手さはないが、人が踏み込むことが果たして許されるのか否かというクローン技術をテーマに、「永遠に自己を複製し続けることの不毛さ、永遠ではなく一瞬一瞬を生きるからこそ大切なものを感じられる尊さ」など有栖川氏の思いが随所に感じられる作品。殺害された木崎の一連の行動に関する見事なロジックなど安定の有栖川ブランドではあるが、島に集う人物たちの秘密を強固に印象付ける描写がほとんどないため、折角の仰天な真相にもやや共感しづらかった点は残念。2015/08/05
nobby
143
作家アリス16作目は孤島ミステリ長編。いろいろ間違って辿り着いた“烏島”の俗称を持つ黒根島で“部外者”として閉鎖的に過ごすのは怖い…怪し過ぎる集団が醸し出す謎めいた思惑はいったい何なのか!?「この島は、どこか変だ。」もう序盤からずっと語られながら、あれこれズレながら結局最後まで焦らされたのに悶絶(笑)事件そのものに決して派手さはないが、島名や多くの会話に細かく散りばめられた伏線はスゴい!ただ、憎悪ばかりの犯人の動機が唐突に語られ出すのが少し残念…神の領域を侵そうとする人間の明るい未来は「ケシテモウナイ」…2022/05/01
ダイ@2019.11.2~一時休止
127
作家アリスその16。クローズドサークルもの。今ではほとんど見かけなくなった人物がモデルと思わせる登場人物にニヤリとさせられる。2013/10/20
takaC
94
うーん、これをミステリと呼んでもいいのだろうか…2015/04/28