内容説明
電車が2~3分遅れるだけで腹を立てる日本人。なぜ私たちは“定刻発車”にこだわるのか。その謎を追うと、江戸の参勤交代や時の鐘が「正確なダイヤ」と深く関わり、大正期の優れた作業マニュアル、鉄道マンによる驚異の運転技術やメンテナンス、さらに危機回避の運行システムなどが定時運転を支えていた!新発見の連続に知的興奮を覚える鉄道本の名著。交通図書賞・フジタ未来経営賞受賞。
目次
鉄道は正確で当たり前?
1 環境(正確さの起源;定時運転の誕生と進化;鉄道が正確でなければ成り立たない都市)
2 仕組み(驚異の運転技術;攪乱要因との闘い;巨大システムのマジック;列車群の生態;よいダイヤは遅れない;「ダイヤの回復力」を設計する;システムの運転台)
3 正確さを超えて(日本の鉄道はこれからも正確か?;成熟社会の夢)
著者等紹介
三戸祐子[ミトユウコ]
1956(昭和31)年東京生れ。’79年慶応義塾大学経済学部卒。数理経済学を学ぶ。’80年、時間の問題を軸に政府と市場の関係を論じた「大きい政府か小さい政府か」で、日本経済新聞社『選択の自由』出版記念論文優秀賞。’83年より経済・経営ライターとして、経済誌を中心に各種レポートを行う。鉄道との出会いは鉄道誌でレポートを書きはじめたこと。2002(平成14)年『定刻発車』でフジタ未来経営賞(書籍の部)と交通図書賞(技術の部)を受賞。最近は、人とシステムの関わりをテーマに執筆。講演活動も行う
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感想・レビュー
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ごへいもち
37
いい読書だった。力作。日本の鉄道の正確さを支えている巨大で緻密なシステムと鉄道員たち。自動車会社に捻じ曲げられたアメリカの鉄道を思う。やはり多少読みにくくてもこういう本を読まずに並の小説を読んでいる時間はもったいないと思った2017/06/18
リキヨシオ
36
定刻発車が当たり前、2~3分遅れるとあれ?10分以上遅れるとイライラ~?となってしまう私達。日本では電車の90%前後が定刻運転。外国の遅延は10分以上で日本の遅延基準は1分以内!私達にとっては当たり前でも世界から見ると「正確」過ぎて異常に見える日本の定刻発車。鉄道職員の高い意識、設備、仕事の分担、システムの設計思想、メンテナンスが優れていて他の国では真似できないという。明治と共に始まった日本の鉄道は大正期に定時運転確保が盛んになり正確無比な日本の鉄道に至る。この当たり前を維持する日本の鉄道に感謝したい!2015/08/31
とろとろ
31
維新後に西洋から入ってきたさまざまな未知の技術をいとも簡単に取り入れることが出来たのは、日本人がそれ相応の独自の技術をそれまでに育てていたからで、鉄道を簡単に受け入れてしまったのがその最たる証拠である。列車が定刻発車するという事実も、また日本人の意識と独自の技術力の高さを実践し具現化しているに過ぎない。江戸時代、鎖国によって世界に取り残されたのではなく、むしろ日本的に純化醸成され外国の何に対してもより優れた意識と技術を持っていたのである。それが維新で弾けただけである、なんて話ですかね。面白かった。2015/11/16
いっちゃんず
31
作者は冒頭で、「電車が遅れた」とする基準は日本が世界で一番短い1分であること、そしてそれがどれだけ特殊なことであるかについて述べる。確かに、運行が遅延して当然の様々な要素を抱えているのに、3分遅れただけで毎度毎度「申し訳ありません」と車掌が車内放送で謝罪するというのも変な話だ。では何故こんなに正確さを追求し、それをどのように実現しているのかについて、歴史面、社会構造、民族性、ハードウェア、ソフトウェア等の多様な角度から科学的に考察している。説明に納得性はあったけれど、終章の論拠が少し弱く感じたのは残念。2015/06/04
小木ハム
25
おそらく世界で一番時間に厳しいと思われる日本人。この国民性は、江戸時代のお寺の鐘衝きシステムが広く庶民に時間感覚を植え付け、莫大な費用をかける参勤交代が『つつがなく事を進める』計画意識を育てたという。また日本は国土が狭いため宿場町までの距離が短く、ここに駅が配置される鈴生り構図が電車の時間調整を容易にしている。現在の鉄道の定刻発車・到着システムは様々な人の働きが創発的に組み合わさって成立していて、まるで人間の身体のよう。全部書くと字数が足りないので一つ紹介すると、ダイヤを作る"スジ屋"。彼らは2019/06/01
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