内容説明
熱烈な恋愛をしながらも優柔不断さから別の女性と結婚した男が、15年たってなお女の消息を求めて心を揺らす表題作。不倫の相手の男性がふと見せた家庭の父親の姿に女は訣別を決心する「午後の別れ」。京都の料亭をひとりで守り通してきた女将の孤独の果ての自殺を描く「ためらい傷」。ほかに「歳月」「匂い袋」など、男と女の心の機微を絶妙に描き出した大人の愛の物語、全9編。
著者等紹介
渡辺淳一[ワタナベジュンイチ]
1933(昭和8)年、北海道砂川市生れ。札幌医科大学卒業、同大学整形外科講師となる。’65年「死化粧」で新潮同人雑誌賞を受賞。’69年札幌医科大学講師を辞して上京、作家専業となる。’70年「光と影」で直木賞を受賞。’80年『遠き落日』『長崎ロシア遊女館』で吉川英治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あつひめ
53
初めて渡辺淳一さんの作品を読んだのは二十歳過ぎの頃。大人の男女の機微なんて全くわからない頃だった。それが今は…男女の睦み合いの中にも、言葉にならない想いがあることがわかる年となってしまった。そして、いつのまにか出てくる男たちは皆年下になった。スマホもネットも無い時代の相手を待つという時間が懐かしくなる。でも、会えない時間が人を情熱的にするのかもしれない。昔の恋愛…それはそれで良いものでもあった気がする。今じゃ到底ダメンズと言われる男たちもそれなりにかっこよく映る。2019/10/18
ゆめ
52
渡辺淳一お得意の男女心の機微を絶妙に描き出した大人の愛の物語。短編9編 どれも飽きることなく読ませてくれる。自分の生活している世界からまた違ったところに連れていかれながらも 女心の微妙な感じや生活感などに近いものをみたり。楽しませてもらいました。2018/05/03
MIKETOM
9
本棚の整理してたらこの本が二冊でてきた。やれやれ(苦笑)読み終わった一冊は北環のリサイクルセンターに寄付してこよう。さて、本書はよくも悪くも昭和だなあって感じ。てか、渡辺淳一の描く世界が昭和どっぷりなんだよね。身勝手な男と哀しい女ってパターンが大半。男は会社社長やらプロデューサー、女は銀座のホステスか京都料亭の女将とか、渡辺が普段接している世界なんだろうな。現代感覚からすると、あ~そうね、ハイハイって感じ。ま、軽く読み流すにはちょうどいい本じゃないでしょうか。決して悪くはないんだよね。2018/05/03
カーミン
9
大人の男女の機微を描いた短編集。ちょっと古臭い言い回しもあるけれど、小説としては面白い。特に、軽い気持ちで銀座のホステスの保証人になったはいいが、女性が雲隠れ。他人の飲み代1000万円を立て替えなければならなくなった男性の悲哀「銀座たそがれ」は、笑えました。2014/08/04
ココ
6
短編小説が9話収録されていた。 どれも、大人の男女にまつわる嫉妬や、心の揺れが描かれており、自分の年齢からは少し背伸びしたような気持ちで読めた。 阿寒に果つを読み、渡辺淳一さんに魅かれたため、名前のみで購入した作品だったが、気に入った。 短編小説はその後が気になったり、続きはないのかという気持ちになってしまうため、あまり好きではなかったが、その後を想像してみるのも面白いと思った。2018/04/03