内容説明
鍋島藩に崩壊の兆しあり。藩主勝茂が孫の光茂を嫡子としたためだ。藩内に燻る不満を抑え切るには、光茂では器量が小さすぎた。老中松平信綱は、不満分子と結び、鍋島藩解体を画策する。信綱の陰謀を未然に潰そうと暗躍する杢之助たち。勝茂は死に際し、佐賀鍋島藩存続のため信綱の弱みを掴め、と最期の望みを託した。男の死に方を問う葉隠武士道をロマンとして甦らせた時代長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
126
時代劇のエンターテイメントとしては大筋は史実にのっとっていますがこの主人公たちは葉隠という精神をまとった空想の人物なのでしょうね。未完で終わって残念なのですが、病床で書かれたメモがあるのでどなたかが書き継いでくれていたらと感じました。人物たちの日常の生活なども書かれていて楽しめました。2018/08/13
にし
49
未完の名作。「今が全て」そんな躊躇いの無い生き方ができるのが本物の武士なんですね。”死人ゆえに自由、死人ゆえに果散、死人ゆえに晴れやかな”生き方を貫く杢之助。カッコイイけどその雰囲気を感じるだけで身の毛が逆立ってしかたない。ギリギリに張りつめた緊張感と覚悟を決めた潔さを併せ持つ現代には無い生き方でした。2013/12/14
ロドリゲス
46
著者の急逝により、第15話をもって未完の作品となってしまいました。本作品の主人公であり、山場になるであろう鍋島藩主勝茂・杢之助・求馬の死については描かれる事はありませんでした。 しかし、杢之助、求馬ともに殉死であることは病床の著者が話していたそうです。 葉隠武士の死とは、決して正史には刻まれることはないと思います。しかし、証人たちが語り継いでいく。それゆえに、自由に・果敢に死人として生きてゆけたのであろう。 ★★★★★ 2018/05/12
emico
35
話にグイグイ引き込まれ、これから!と言うところで終わってしまったのが何とも勿体無いです。未完とは分かっていてもなお、最後まで著者の文章で読みたかった。ただ、救いは『結末の行方』で筋書きが描かれてたことかな…ステキな作品だけに惜しくて悔やまれます。とはいえ未完ではあっても、一読の価値ある作品だったです。2014/04/29
ともとも
31
豪快で、強く優しく、不器用でブレない鍋島武士たちの物語。 上巻に続き、陰謀や騙し討ちなんかもあって、ハラハラさせられながらも、そんな、心地よい男たちが立ち向かっていく。 痛快娯楽的なニュアンスを醸し出しながらも、覚悟と堂々とした強さを感じながらも、人の生と死について深く考えさせられてしまいました。 生きていく上での最大とも言えるテーマ 強く優しく、一生懸命に生きていくことの大切さを感じさせる物語で良かったです。 2016/08/27