内容説明
愛される少年。愛する男。男同士を嫉妬しながら少年を母のように抱く少女。そして、恋人を美少年の魅力から取り戻そうとする黄昏の女の破滅的な情炎。頽廃と純真の綾なす官能の世界を、言葉の贅を尽して描く表題作。愛する少年を奪われる前に殺し、自らも息絶えた男の鮮烈な最期。禁じられた恋の光輝と悲傷を雪の武蔵野に綴る『枯葉の寝床』など、鬼才のロマン全4編を収録。
著者等紹介
森茉莉[モリマリ]
1903‐1987。東京千駄木生れ。森鴎外と二度目の妻志げの長女。生来病弱だったため、特に父の溺愛をうけて成長した。さらに20代での二度の離婚経験、初婚時代の滞仏体験を経て、幻想的な芸術世界を艶美繊細に築きあげる文学的資質が開花した。50歳を過ぎて父の回想記『父の帽子』(1957、日本エッセイスト・クラブ賞)で評価を得、その後は独自の創作を展開した。主著は『恋人たちの森』(田村俊子賞)、『甘い蜜の部屋』(泉鏡花賞)等
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
青蓮
116
森茉莉はエッセイは読んでいたけれど、小説は初めて。耽美でロマンチックで廃退的な世界観にがっつりと浸れました。「恋人たちの森」「枯葉の寝床」「日曜日には僕は行かない」は所謂BLものですが、そこに渦巻く愛憎は強烈で男女の恋愛より何か激しいものを感じました。特に「枯葉の寝床」の異様な緊迫感と焦燥感は読み手の胸の裡をジリジリと焼くよう。彼女の文章は独特なリズムですが、読み慣れると心地よく響いてきます。言葉の贅を尽くして構築された禁断の愛の世界を存分に堪能しました。また他の森茉莉の作品を読んでみたい。2017/12/27
優希
78
愛し愛されるロマンが美しかったです。耽美という言葉はこの作品集のためにあるような気すらしました。いわゆるBLの世界が大半を占めていますが、禁じられた恋ほど眩しいものはありません。独特の世界とリズムの中に浸るのが心地良い。存分に堪能させて頂きました。2018/04/27
コットン
70
幻想小説が好きと言うと、女性古書店店主は「BLだけど幻想的」とのことで購入。4編中、最初の1編のみ非BL「ボッチチェリの扉」:精神的な力関係の駆け引きが面白い。「恋人たちの森」:情事をさらっと暴風雨の中の若い樹々にたとえる辺りが上手い。どことなく海外を思わせるガジェットや上品さがさすが文豪の娘!2016/01/30
ミツツ
34
昭和三十年代に書かれた細やかな文章がとても美しい。ただ少々分かりにくいところがあり短編の3話目にしてようやく馴染めた。ナルシズムとマゾヒズムとは美少年のもっている二つの性癖にはちがいない、には私も納得。イメージは昔読んだ「風と木の詩」です。2019/01/15
橘
33
森茉莉さんの小説を久々に読みました。BLなのですが、耽美で退廃的でとても良かったです。お話に怠惰な空気が漂っているのが好きでした。愛と死はセット、みたいな、「恋人たちの森」と「枯葉の寝床」が印象深いです。若い恋人の外見の繊細な描写が、外国風の名前とともに不思議な魅力でした。2017/06/10