内容説明
天売・焼尻島を眼前に望む苫幌村で商店を営む順平、ふじ乃の一人娘として生まれた志津代。幼なじみの文治に思いを寄せる志津代の幸せな生活も、天性の美貌を持つふじ乃が行商人と一夜の過ちを冒し、息子の新太郎を身籠ったことから狂い始め、それを苦にした順平は急死してしまう…。自らの祖父母をモデルに、明治・大正を生きた家族の肖像を描く、波瀾万丈の人間ドラマ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
69
中津志津代という一人の女性の生き方を軸「母の一夜の過ち」を絡ませながら、人間の憎しみと許しを丹念に描く。本書は著者の父方の祖父母をモデルにしたらしいが、三浦綾子らしい世界を構築している。
有
46
お金があるから信じ合えなかったふじ乃と順平。継がねばならない家があるからあと一歩踏み込めない志津代と文治。なかなかうまくいかない。もどかしい。三浦綾子さんの本を読む時は必ず人格者がいて、いつもそこに憧れてしまう。「正しく生きる」とは何なんだろうと、毎回考える。2022/08/12
kawa
37
久々の三浦さんの作品、相変わらずの三浦テイスト。主人公の文治は例えば、「泥流地帯」の主人公の兄・拓一とイメ-ジの重なる好人物で1%位の反発がない訳ではないのだけれど、いつのまにか三浦ワ-ルドに持っていかれてしまうことに苦笑。因みに、本書の舞台・苫幌は架空の地で、留萌から北へ40キロの苫前町がモデルの地だそう。この地は吉村昭氏の「熊嵐」の舞台地でもあり、作中に出てくる空知集治監、樺戸集治監も同氏の「赤い人」で描かれている。サイド・スト-リ-的に読書の助けになりグッド。2021/06/07
タピオカ
20
(三浦綾子記念文学館復刊シリーズで)苫幌村で商店カネナカを営む順平、ふじ乃の一人娘として生まれた志津代。4歳年上の貧しい旅館山形屋の次男文治。お互いに思いを寄せる。予測のつかない人間ドラマ。下巻へ。2022/05/22
ろこぽん
8
三浦綾子さんのお話は、次から次へと問題が起こるけど、なんだかんだで乗り越えていくのよね。(で、また問題発生のループ) 「まじめすぎて損するけどささやかな幸せを求める女性」と「めちゃくちゃな女性」の設定が多い。でもめちゃくちゃな女性も心からの悪いヤツではない。人間とは。と毎回考えさせられる。みんな幸せになってほしい。さて下巻へ。2024/01/16




