内容説明
人間の大病は一生に三度ほど。そのとき自分の臍の緒を煎じて飲むと妙薬となる、という。幼少期に肺炎を患った峰子は、自分のそれの行方が俄かに気になる。ラスト1行に戦慄する表題作ほか、皇国の世に小学校を包む妙なる調べ「月光の曲」、亡夫の運命を高名な占い師に尋ねたくなった妻の心理「星辰」、コーンスターチを大量購入する女の秘密「魔」。生の不思議に酔う、純文学短編集。
目次
月光の曲
星辰
魔
臍の緒は妙薬
著者等紹介
河野多惠子[コウノタエコ]
1926(大正15)年、大阪生れ。大阪府女専(大阪女子大学)卒。『文学者』同人になり、’52(昭和27)年、上京。’61年「幼児狩り」で新潮社同人雑誌賞、’63年「蟹」で芥川賞を受賞。著書に、『不意の声』『谷崎文学と肯定の欲望』(共に読売文学賞)、『みいら採り猟奇譚』(野間文芸賞)、『後日の話』(毎日芸術賞、伊藤整賞)など。日本芸術院会員。文化功労者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ふるい
8
日常描写のディテールが抜群なので、主人公たちが執着に至る過程が自然で納得してしまう…じわじわ怖いやつ。2020/01/16
sk
6
無理のないアイディアによって無理のない展開が描かれ、細部が丁寧に充填されている純文学のお手本のような短編集。読者の心を低い水位から隅々まで満たしていく自然なつくりがとても癒しに満ちている。ただ生きているだけで何てことのないミステリーが生じる2014/04/29
押さない
3
「月光の曲」「星辰」「☆魔」「☆臍の緒は妙薬」まとまりの完成度として見るならば、他の本の方が高い。しかし好きな人にはたまらなくツボな種類のものだろう。前に後ろに右に左に移動するが、実はうろうろと浮遊していただけだった。そういった性質が好みな人向けの嗜好。2018/07/22
イッセイ
3
4編を収めた短編集。生活に潜む民間伝承を題材にしている。たとえば、臍の緒は大病に効くとか。戦前戦後生まれの人なら、ピンとくるかも(S)2011/06/09
OMO
1
面白さ:○ 興味:○ 読みやすさ:○ 新鮮さ:○ 文学的云々:×2021/12/11