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新潮文庫
赤い唇・黒い髪

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  • サイズ 文庫判/ページ数 254p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784101161037
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

紅茶の季節に、孫娘の赤いくちびるの色に魅せられる祖母の偏愛「赤い唇」。外国にいる恋人に、冷たい感覚の右半身をゆだねる女の幻想「片冷え」。誰かに言いたくてたまらないある言葉への欲望「大統領の死」他人には言えない若い妻の妖しい願望「朱験」。老親の生への偏執「来迎の日」…。現実生活につなぎとめられた異常な感覚を軸に、大人の女のエロチシズムを描く短編集7編。

著者等紹介

河野多恵子[コウノタエコ]
1926(大正15)年、大阪生れ。大阪府女専(大阪女子大学)卒。「文学者」同人になり、’52(昭和27)年、上京。’61年「幼児狩り」で新潮社同人雑誌賞、’63年「蟹」で芥川賞を受賞。日本芸術院会員。コロンビア大学客員研究員
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

やまはるか

12
 幼女の赤い唇に魅せられる女、皮膚に点滅する刺激を感じる女、「大統領が死んだ」と言いふらす女など特異な性格の主人公が登場する7つの短編。「今日は何だか皆ともお別れのような気がするんでね」ある朝、89歳の父が夫婦の寝室を覗いて宣言する「來迎の日」は、死はかくありたいと思わせて興味深い。子や孫が枕元に揃うが空振りとなり、4度目に同居の孫からオオカミ少年を知っているかと聞かれ、隣の部屋で探し物をしている娘たちに「喧しいな」と襖の向こうから言った言葉を最後に來迎の日となる。 2022/05/03

あ げ こ

11
無自覚のまま、見据える事を避けたまま、秘め続けているものの発露を厭う。自身の内より出でるものである為に、自身の内を見抜く力を備えた視線を厭い。だが、誘われていると言う予感は消えず、静かに委ね。蠱惑的な赤、怖ろしく、おぞましく。これぞ、と戦慄。人を、その容貌を、その生を、全てではなく、ごく僅かな違和感(通常に収まる程度の)を含む一端一端を、網羅する際の綿密さとは異なる執拗さを以って、彫り続ける。白々しいまでに端正に、安易な綻びを作る事もなく。何一つ無駄なもののない空間に響く音は常に硬く、静かであり、美しい。2015/10/28

kozy758

10
静謐な趣きな作品集であり、秘められた性欲がにじみ出る。それぞれの作品をさらりとは読み終えるのは難しく、次の作品に向かうのには意志が必要だった。2015/03/09

あにこ

5
『大統領の死』や『朱験』にはゾクゾクした。誰でも等しく変態性を有しているものだと確信が持てた。正常の中の異常である"秘事"を描き出してるわけですけども、やっぱ奇想的短篇にはオチが欲しくなってしまうわけですよ。だがそれがない。やっぱり私には純文学は合わないなぁ、と思う。話しの進め手と時系列があちこちに飛ぶので量の割に時間がかかる。2010/01/11

あ げ こ

2
日常生活の中で芽生えた、奇妙な欲望。登場人物たちは自らに芽生えたその欲望の虜となり、思考は次第に欲望への偏執に満ち溢れた異常なものへと塗り替えられていく。どこか官能的。彼らのまともな暮らしぶりが、却って心底の異常性を際立たせる。まっとうな人間の思考が染まっていく様、誘惑に堕ちていく様。現実に近い場所で起こる彼らの変容は、恐ろしくも不思議と目が離せない。2013/02/08

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