出版社内容情報
父の敵は死んでも討つ! たとえそれが八万石の殿様であろうとも。
「お若えの、お待ちなせえやし」――名調子の主は幡随院長兵衛。その波瀾万丈の生涯は、ある刃傷沙汰から始まった。塚本伊太郎(後の長兵衛)は父を殺され、仇討ちを決意。が、伊太郎も刺客に襲われて重傷を負う。その後、親友の旗本水野十郎左衛門の協力で、父の主君であった唐津の殿様の異常な性格を知る。決意を胸に秘めつつ、伊太郎は恩人の山脇宗右衛門の元に身を寄せるが……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
姉勤
23
若武者:塚本伊太郎が、侠客の祖とも謳われる江戸町奴(まちやっこ)の親分、幡随院長兵衛が成る直前まで。ひとを救い、皆に頼られ、男を建てるであろう彼が、命の危機の度々に、ひとかどの男達に出会い、救われ匿われ、孵卵を待つ。後の宿敵となる旗本奴(はたもとやっこ)水野十郎左衛門との運命の出会いも面白い。いまだ部屋住みに近い伊太郎が、どう復讐を遂げ、侠を上げていくか楽しみ。また、まだ戦国の気風が残り、一触即発を怖れる江戸初期の、幕府のナーバスな空気もどう変わっていくかも、下巻の見もの。2013/05/07
Kira
15
角川文庫版既読。塚本伊太郎(後の幡随院長兵衛)がたどる波乱の生涯を描いた長編。上巻は、父を殺された伊太郎が仇討ちのために画策する日々で終わる。親友となった旗本水野十郎左衛門の男気がとてもいい。結末を知っていても、面白すぎてどんどんページをめくってしまう。2022/10/14
ここぽぽ
10
一人の武士の無体な殿様に対する仇討ち。いつの時代も暴君の権力者に振り回されてしまう弱い民。世知辛いなと思う。下巻へ。2023/06/11
007
6
「お若えの、お待ちなせぇやし」 侠客の元祖幡随院長兵衛サンを追っていたら池波正太郎作品で見つかりました。上巻は、唐津の殿様に命を狙われ波乱の人生を送る展開。彼を見込んで支援する人徳者たちが頼もしく、明快な文章で読んでいて楽しいです。2013/02/05
文句有蔵
5
なんというか、有り得ない程親切な人ばかり登場するので、いささかげんなり。直参旗本当主が自ら、そんなに気軽に江戸を離れてちょっとそこまで近江まで、だなんて有り得なさ過ぎる。しかもただの直参ではない。水野なのだ。これが史実にあったことだというなら、池波先生の力量が足らぬということになる。一読者としては荒唐無稽としか思えない。艱難辛苦して読了。2013/07/06