内容説明
十四歳の春、越後・新発田藩の家来中山弥次右衛門の一人息子、安兵衛は、行きずりの山伏に「いまの世に剣をとって進むとき、おそらく安兵衛どのは短命であろう」と断言される。泰平の世に厳しい剣術の鍛練を強いる父を憎んですらいた彼は、もとより力による争いごとより学問を好んでいた。が、濡れ衣による父の非業の自死を見届けた瞬間から、「短命」への歯車は、静かに回りはじめた…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
saga
54
上巻では、まだ本来の姓である中山を名乗る安兵衛。越後・新発田で、戦国時代の威風辺りを払う父を失い、気持ちの赴くままに国を捨て、様々な苦労を重ねた安兵衛。男装の麗人・伊佐子の登場は『剣客商売』の佐々木三冬を彷彿とさせ、思わずニヤリ。大石内蔵助との出会いもさり気なく描かれている。故国出奔を許されて後の安兵衛の成長していく過程も楽しめた。2020/05/12
優希
50
面白かったです。赤穂浪士の一人・堀部安兵衛の物語。剣より学問が好みだったことに意外性を感じました。行きずりの山伏に剣をとれば短命になると言われた安兵衛。厳しい剣の訓練をしていた父の自死が短命の歯車をまわし始めたのだと思うと、忠臣蔵への時間まで長くはないと思えてなりません。下巻も読みます。2023/02/26
いちろく
46
大石蔵之助でもなく、吉良上野介でもなく、赤穂浪士の一人である堀部安兵衛から見た忠臣蔵。結末は、同じ過程を歩むと分かっていても、女性問題で失敗したり、14歳の時点で自身の父の仇討ちを行なっていたりと、波乱万丈な人生は、読んでいて飽きさせなかった。関ヶ原から80年近くが経過した世に、剣の道を選択した男の物語。紹介用に再読。2018/05/06
フミ
23
昨年からの赤穂浪士ブーム「次は池波正太郎さんで」と手に取ってみました。越後・北部の少年剣士「安兵衛」が、豪傑な父の謎の切腹を期に、死の手がかりを追って江戸へ~という出だしから、冒険活劇かな?と思いましたが、その後、様々な人物との出会い、別れ、挫折などを繰り返し、1人前の剣士へと成長していく「人生物語」な作風へ。 前半から存在感を示す野心家の剣士「中津川祐見」。安兵衛と深い縁を持つ「菅野六郎左衛門」はじめ、登場人物が魅力的です。8割くらいは創作かな?と思える伸び伸び感はありますが、人生を描いてくれています。2025/01/04
カレー好き
22
日本人が大好きな忠臣蔵の堀部安兵衛の人物伝。池波正太郎先生の本は女性が出てくると俄然面白くなる。下巻へ。2024/06/01