内容説明
「江戸切絵図」は現代の東京区分地図にあたる。切絵図を片手に散歩に出れば、いたるところで江戸の名残りに出会い、剣客親子や火付盗賊改方の活躍の場所を彷彿とすることができる。浅草生まれの著者が、失われゆくものを惜しみつつ、子供の頃に目に焼き付けた情景を練達の文と得意の絵筆で再現して、江戸と東京の橋渡しをしてくれるユニークな本。切絵図や浮世絵、写真など多数収録。
目次
上野界隈
大川
築地界隈
日本橋
神田と本郷
皇居周辺
渋谷と青山
大久保・新宿・四谷
品川・目黒
小日向・音羽・雑司ヶ谷
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
chimako
89
剣客商売ファンとしては巻末の地図にいつまでも見いってしまう。傘徳の家は新宿。そこから鐘ヶ淵まで駆けつけてくるのだから昔の人は足が達者だったんだなと感心したり、ここで又六は商いしてたんだなぁとか………もちろん本文は興味が尽きない。著者の挿絵に驚いたり、行きつけのお店をメモったりと池波先生に教わることは多い。手元において時々開いてはあっという間に江戸の空気を感じられる。随分前に夫に送った一冊。前々日色褪せない名著です。2016/03/21
やいっち
87
池波氏の小説も好きだが、何と言っても東京在住30年だったので、東京の主に都下への思い入れは人一倍である。方々を歩いたし、車でオートバイで走り回った。居住したり会社のあった地域(西落合・上高田・新宿・大久保・飯田橋・高輪・三田・芝浦・海岸・中延・大森……)についてはなおのことである。 東京出身や在住の作家らへの思い入れもある。関連本も様々読んできた。本書を読んで、古地図を手に歩けばよかったなーという悔いの念を覚えている。だからこそ、今、富山に帰郷した以上は、富山の方々を動いて回るつもりである。 2020/07/08
コットン
70
古地図(切絵図)好きな池波さんのエッセイ。江戸は鎌倉時代は「江戸氏」のものだったからとか、渋谷に清流があったとか東京の昔と今を感じる事が出来る。彼の本が好きな人には巻末の「池波正太郎作品地図」もうれしいと思う。2015/08/29
ポチ
65
大切な友から頂いた嬉しい本。昔歩いた場所がいくつかあり、切絵図と重ねて思い起こすと楽しくなって来る。この切絵図の面影が残っている場所を探すのは今では苦労するだろうが、それもまた楽しみかな。2019/10/09
たま
60
剣客商売を読み返すうちにこんな本があることに気がついた。作家自身が切絵図を手に東京を歩く。自身の子ども時代、街の変貌、自作での扱いを綴る文に図版が添えられている。正直言って切絵図は見にくいが、江戸の鳥瞰図や全景図は見飽きず、北斎、広重、井上安治の版画、自筆の風景画、もちろん写真もある。710円の文庫本が実に贅沢。図版の一枚一枚から楽しみながらあれも入れたいこれも入れたいと取捨を重ねた感じが伝わり、自筆風景画は情感たっぷりで昔を懐かしむ作家のまごころに触れる思い。ていねいに作られた心に残る本である。2023/12/13