出版社内容情報
映画の試写を観終えて、銀座の〔資生堂パーラー〕に立ち寄り、はじめて洋食を口にした40年前を憶い出す。外神田界隈を歩いていて、ふと入った〔花ぶさ〕では、店の人の、長年変らぬ人情に感じ入る。時代小説の取材で三条木屋町を散策中、かねてきいていた〔松鮨〕に出くわす。洋食、鮨、蕎麦、どぜう鍋、馬刺から菓子にいたるまで、折々に見つけた店の味を書き留めた食味エッセイ。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HIRO1970
162
⭐️⭐️⭐️⭐️久々の正ちゃん。池波さん通算141冊目。私同様に食べる事が若い時から大好きな正ちゃんを味と雰囲気で魅了した古今東西の銘店の数々がこれでもかこれでもかと次々と登場して来ます。今から40年程前の本なので、今も変わらず営業しているかは調べて見ないと定かではありませんが、過去に読んだ著作のあの場面に登場してきた店がそうなのかと、目と頭の中だけで無く、胃と食欲を連続で刺激されクラクラしました。都市部と旧街道筋の店が多いのでまだまだ健在なお店もありそうです。皆さんの確認済みのお店があれば教えください。2016/06/14
KAZOO
156
結構古くなってしまって、現在は無くなっている所もあるのですが、さまざまな食べものに関する場所でのエッセイでじっくりと楽しめます。ネットなどでの最近のうまいところの紹介に比べるとやはり文章などで格段の違いがあります。私も行ったところがいくつかあり懐かしくなりたずねてみようと思います。2017/09/20
mukimi
132
(再読)グルメといえば池波正太郎。大学生の頃仲良かった男友達が本書に登場する店を巡るという贅沢な遊びをしていた。節約家庭の食で育った私は、グルメを愉しむことにどこか後ろめたさがあって、彼の趣味をあまり好ましく思えなかった。社会人になって自分でお金を稼げるようになって再読。筆者の歳が祖父と変わらないことを知り美味しいもの好きだった祖父の生きた昭和の風景にも想いを馳せた。今ならこの本に出てくるお店にも行けるけど、美味しいものを食べる幸せを全身で味わうために無邪気な感動と感謝の心はずっと持っていよう。2024/01/27
ゴンゾウ@新潮部
127
食通としても有名な池波正太郎氏のエッセイ集。大正生まれの池波氏が少年の頃から通い詰めた思い出の店を書き残している。この作品は単なる食べ歩きガイドブックではなく戦前戦後の激動時代も乗り切った名店の今を切り取っている。氏が後書きで「現代人の食生活は、複雑で予断を許さぬ時代の変転につれて、刻々と変わりつつある。そうしたいみで、この後20年もたてば、この本は小さな資料になるかも知れない。」と残している。まさしく20年以上経った現代で氏が生きていれば何を思ったであろうか。2015/05/16
greenish 🌿
92
池波正太郎と言えば、時代小説家の顔を持ち、映画狂としての顔を持ち、そして食通としての顔を持つ。そんな池波氏が折々に訪れた店の味を綴った食味エッセイ ---洒脱なタイトルに惹かれて手にしたが、そこには池波氏と氏が愛する店主の、食に対する粋・美意識・矜持が詰まっている。巻頭の写真、食材から料理・店構えまでの描写を読むにつけ、お腹が空くわ、妄想は膨らむわ、でもう大変! 昭和52年の発行時から「何十年後かの変貌」を示唆しているが、そこから30年超の歳月・・・時代とはいえ、古きよきものの消滅もまた淋しいものです。2014/06/23