出版社内容情報
吉岡一問との死闘で少年を斬り捨てた己に惑う武蔵。さらに、恋心滾るあまり、お通に逃げられてしまい……邂逅と別離の第五巻。
富士の前に、人間は小さい。ならば小さいなりに立派に生きたい! 吉岡一門との大死闘を切り抜けた武蔵。起死回生の勝利の酔いから醒め、敵将とは言え年若い少年を斬り捨てた記憶に胸を痛める。いっそ修行などやめ、愛する女と暮らせたら……とさえ思う。だが猛る恋心をぶつけたお通には、逃げられてしまう。剣の道と人の道との相剋に身を削る武蔵が、飽くなき自問の果てに捉えた閃きとは――。願いは交錯し、隘路へ誘う。邂逅と別離めくるめく第五巻。
内容説明
吉岡一門との大死闘を切り抜けた武蔵。起死回生の勝利の酔いから醒め、敵将とはいえ年若い少年を斬り捨てた記憶に胸を痛める。いっそ修行などやめ、愛する女と暮らせたら…とさえ思う。だが猛る恋心をぶつけたお通には、逃げられてしまう。剣の道と人の道との相剋に身を削る武蔵が、飽くなき自問の果てに把えた閃きとは―。願いは交錯し、隘路へ誘う。邂逅と別離に心揺れる第五巻。
著者等紹介
吉川英治[ヨシカワエイジ]
1892‐1962。神奈川県生まれ。船具工、記者などさまざまな職業を経て作家活動に入る。国民文学作家と親しまれ、1960(昭和35)年文化勲章受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
オーウェン
50
前巻での吉岡一門70人との死闘を制した武蔵。 だがそこで斬り殺した跡地で思いを馳せる。 そして辿り着いたのはお通だが、想いは届かず。 激しい死闘の後だからなのか、この巻はかなり一休みといった感じの内容。 夢想権之助が出たり、武蔵と又八の再開などがあるが、かなり見せ場に乏しいのは否めない。2023/07/26
金吾
30
やや動きは停滞していますが、内面の部分は進んできたように感じます。武蔵以外の人たちは何をしているのかよくわからなくなってきました。2022/12/27
たかしくん。
29
折り返しの5巻です。相変わらず劇画調の語りが続き、まずは武蔵が初めて富士山を見て感動する場面から。その中で、武蔵が初めて「負けた」と叫んだ相手、夢想権ノ助の「導母の一手」の話は、ちと格好良すぎではあるも、ホロっとさせる話です。道中で遭遇したお甲を遂に引導を渡し、物語は回収の兆しも見え始め!(笑) 舞台は、建設ラッシュに沸く初期の江戸に移ります。これまた江戸に向かい、吉原の遊女となった朱美、可哀想な位の幸の薄さです。。2019/04/28
ブラックジャケット
20
武蔵の評価を難しくしているのが、一条寺下り松で、年端のいかない吉岡源次郎を真っ先に殺したこと。決闘の理屈では正だが、刀が感じた感触は否だろう。好き合っているはずのお通とも、運命の歯車はイタズラ、城太郎ともども離ればなれに。武蔵の修行は夢想権之助との対決で新たな一歩を築く。有為の剣の人材を求める伊達藩士とのめぐり合い。群像劇の趣もある第五巻。高き山の武蔵、すそ野の群像と山容の描写は詳細で、巨編を支える。舞台は京から新開地の江戸へ移る。荒れ地に廓が建てられる。京から遊女たちが大挙して江戸へ入る。第六巻へ。 2024/03/18
しんすけ
17
今までの躍動感が無くなり平坦に物語が進んでいる。 武蔵自身は転換期を迎え内省を促されているのだろうか。負けてはならない戦いで止むを得なかったとは云え、十二歳の少年を殺してしまったことを武蔵は苦渋している。 武蔵にとっては信念あっての行動であってもそれを人に行っても通るものでないことも明らかだから。 観音を掘る行為もその象徴なのだろう。 江戸に向かう道で一時はお通と同行もしたが、ある時それが断ち切られる。そこに朱美も絡み、青春の歯痒さのようなものを感じさせる。2021/04/27