内容説明
’72年7月、田中角栄が総理に就任。国中が列島改造ブームに沸くが、これは地価高騰とインフレを促進する結果となった。このころ司馬遼太郎は『花神』を刊行。’73年、『国盗り物語』がNHK大河ドラマになり、「国民作家」の名が定着する。この巻は連載完結の感慨を綴る「『坂の上の雲』を書き終えて」の他、戦争時代の体験から日本の奇妙さに思いを馳せる「戦車の壁の中で」など39篇を収録。
目次
起訴状を読んで
戦車・この憂鬱な乗物
受賞の言葉(吉川英治文学賞)
既成の歴史を変形させる炸薬(『日本史の旅1 京都の謎』)
はしがき(『日本人と日本文化』)
竜馬雑話
戦車の壁の中で
人間のゆゆしさ
無題(広瀬正著『鏡の国のアリス』)
あとがき(『坂の上の雲 五』)〔ほか〕
著者等紹介
司馬遼太郎[シバリョウタロウ]
1923‐1996。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を一新する話題作を続々と発表。’66年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞を受賞したのを始め、数々の賞を受賞。’93(平成5)年には文化勲章を受章。“司馬史観”とよばれる自在で明晰な歴史の見方が絶大な信頼をあつめるなか、’71年開始の『街道をゆく』などの連載半ばにして急逝
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感想・レビュー
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優希
49
『坂の上の雲』を描き終えた頃なので、戦争から日本に思いを馳せているように思いました。戦争の記述が多めなのもそのせいかもしれません。また、『国盗り物語』がドラマになったことで、司馬さんも国民作家として名が定着したのでしょう。まさに転機と言えますね。2023/03/25
Tomoichi
23
6巻でやっと私の生まれた頃のエッセイに。私の中で好きな作品の「花神」や「坂の上の雲」が完結した頃で、一番脂が乗っていた時期なのかも。「ゴッホの天才性」は、美術考察エッセイとしても面白く著者の意外な一面が知れて面白かった。2024/01/06
はかり
18
久々に司馬遼の随想集を読んだが、古希を迎えたわが身には面倒で難解過ぎた。もう「―が、しかしー」という彼の論の展開にはついていけない。彼の博識や深い思念には頭が下がるが、完全理解は不可能だ。やはり司馬遼の随想には苦手意識があるのだろうか。2023/03/10
時代
14
『司馬遼太郎が考えたこと』シリーズ第6巻。色々な媒体に書いたエッセイなどを時系列順に。昭和47年4月から昭和48年4月まで。「花神」「坂の上の雲」連載完結。戦車についてたっぷりと綴っています◯2021/04/20
isao_key
11
本巻には自身の戦争体験を基に述べた文が何箇所か出てくる。「自分の台所のまずしさを秘密にして御近所にホラばかり吹いてまわるという女の腐ったような軍事機密は日本陸軍のひとつであった」と容赦なくこき下ろしている。司馬さんの文は、軽い読み物であっても、実に綿密に調べられている。人物を書くのがとても上手い。読んでいるとその人の輪郭が浮かび上がってきて、読者にぐっと近づいてくるようだ。それは取材方法に現れている。原則として権威者に物を聞いたり、助手をつかって資料を調べてもらったりすることはいっさいしない、と述べる。2014/07/31