内容説明
ある夏の朝、波多雪子は庭先を通りかかった一人の男と知り合った。庭に咲く朝顔の種を分けてほしい、と声をかけてきたその男は、やや投げやりな性格であったが、優しい一面も見せ、時おり訪れては話をするようになっていった。だが男には別の顔があった。自らを詩人と称して次次に女性を誘い、犯し、殺しては埋めるという冷酷な人間。雪子はまだ、その顔を知らなかった…。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
72
物語は「宇野富士男」という 手当たり次第に女性を襲い、殺して埋めるという冷酷な悪と、「波多雪子」という何事にも期待を抱かず、つつましく 控えめに生きていく女性という聖とを対照的に登場させながら、進んでいく。ただ、曽野綾子がこの対比で何を描こうとしたのか読んでいてよくわからなかったというのが正直なところ。「悪」の描き方も中途半端で魅力的な悪でなく、犯罪にいたる感情も突発的であり、「聖」の描き方もむしろあきれはてるほど、純粋無垢であり、ただ淡々とした印象しかない2010/05/23
うのきち
12
大久保清事件という婦女連続暴行殺人事件が題材らしい。ナンパ、世間話、ナンパ、世間話、殺人、ナンパ、世間話、殺人、ナンパ、……という繰り返しで眠くなってくるが、雪子というクリスチャンの女性が今後この男にどこまで影響を与えるのかが気になるところと云えば気になるところである。2011/03/06
オカピー
11
天井の青(ヘブンリー・ブルー)。猟奇的な殺人をし続ける富士男と家の中で仕事を続ける雪子。居場所のない富士男、セックスと時間つぶしを探し求めて彷徨う。居場所を部屋の中だけしか見いだせない縫物をして生活をする雪子。今後の展開は、(下)巻で。2023/09/09
Yumi Ozaki
8
嘘つきで精神年齢の低そうな男だけど、結構騙される人っているものなんだなあ。あまりに非現実的な嘘だと却って信じやすいものなのかもしれません。下巻はどうなっていくのか、読んでみます。2022/07/24
野鹿
8
上巻読了。下巻で富士夫と雪子はどう展開していくのか。話の途中なので、思った事を。まず朝顔の品種がヘブンリーブルーで、タイトルの天上の青って綺麗だなと思ったのと、でもその種は無残に捨てられる。なんか悲しい暗示のような気がしてちょっと苦しい。富士夫について。ついつい、サイコパスなのかとかカテゴリー分けしたくなるけど、そういうのは粋じゃないのは分かってるつもりです。嫌な男、嫌では表せない、まだ人間になっていない男という感じでしょうか。こんなに簡単に人が殺せるのか。殺人が起こっているのに何も無い様な感覚がする。 2017/11/10




