内容説明
そこには花と幽玄が絡みあい解けあった濃密な夜の舞があった―。『風姿花伝』『花鏡』などの芸論や数々の能作品を著した能の大成者・世阿弥。彼が身に覚えのない咎により佐渡へ流されたのは、齢七十二の時だった。それから八十過ぎまでの歳月の中、どのように逆境を受け止め、迫り来る老いと向かい合い、そして謎の死を迎えたのか…。世阿弥、波瀾の生涯を描いた瀬戸内文学の金字塔。
著者等紹介
瀬戸内寂聴[セトウチジャクチョウ]
1922(大正11)年、徳島生れ。東京女子大学卒。’57(昭和32)年「女子大生・曲愛玲」で新潮社同人雑誌賞受賞。’61年『田村俊子』で田村俊子賞、’63年『夏の終り』で女流文学賞を受賞。’73年11月14日平泉中尊寺で得度。法名寂聴(旧名晴美)。’92(平成4)年『花に問え』で谷崎潤一郎賞、’96年『白道』で芸術選奨、2001年に『場所』で野間文芸賞を受賞。’06年、文化勲章を受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
49
『風姿花伝』で有名な世阿弥の生涯を描いた作品です。匂い立つ艶かしい文章で世阿弥を語り、美しい芸術作品にしているのは流石ですね。男色のくだりなんかもありますが。「秘すれば花」という波乱の一生を生き抜いた言葉が深いと思いました。身に覚えのない咎によって配流になってからの生活でどのように逆境を受け止め、老いと向かい合っていったのか、何を得たのかに思いを馳せずにはいられません。苦しみ抜いて解脱の境地に入ったように見えても苦しみ抜いた姿がここにはあります。濁世の中で輝きを放ち、幽玄の世界を見たような気がしました。2014/10/16
T2y@
17
『風姿花伝』からの引用も含みつつ書かれた、能の創始:世阿弥の生涯。 体感から醸し出されたであろう、快楽・ぬくもりの艶かしい描写は特に印象的。 一方で、晩年 諦観の域に入り、人生の終い方を諭されるような件は、ドロドロした都での所業からなる前半とのギャップも相まり、頁以上に時間軸の深さを感ず。 流刑先として過ごした佐渡もまた、たおやかな土地として描かれており、久しぶりに、かの地へ旅したくなった。 2016/05/16
あおさわ
7
能の大成者、世阿弥の生涯。時に芸に時に色に翻弄されつつも確かに歩んできた道筋が静かに美しく、そして情熱的。男色の描写も抑えられていますが実に性的です。美しい文章。さすが瀬戸内先生です。2011/06/22
El Ingobernable
4
儚いから貴いって日本人らしい感性だなあとなんとなく思いました。花は散るからこそ儚く美しい。人生もしかり。2024/03/18
ビュート
4
構成も文章も素晴らしかった!ラストは一気に読んでしまい、読み切ったところでポロポロと涙が。。。 臨場感があって匂い立つような描写が素晴らしく、一文一文味わうように読みふけってしまった。 流れるようにすべてが繋がっていて、途中で入る時勢の説明もストーリーを邪魔せず自然。本当に素晴らしかった。。何度も読み返したい1冊。 2018/02/18




