内容説明
妻子ある不遇な作家との八年に及ぶ愛の生活に疲れ果て、年下の男との激しい愛欲にも満たされぬ女、知子…彼女は泥沼のような生活にあえぎ、女の業に苦悩しながら、一途に独自の愛を生きてゆく。新鮮な感覚と大胆な手法を駆使した、女流文学賞受賞作の「夏の終り」をはじめとする「あふれるもの」「みれん」「花冷え」「雉子」の連作5篇を収録。著者の原点となった私小説集である。
著者等紹介
瀬戸内寂聴[セトウチジャクチョウ]
1922(大正11)年、徳島生れ。東京女子大学卒。’57(昭和32)年『女子大生・曲愛玲』で新潮社同人雑誌賞受賞。’61年『田村俊子』で田村俊子賞、’63年『夏の終り』で女流文学賞を受賞。’73年11月14日平泉中尊寺で得度。法名寂聴。’92(平成4)年『花に問え』で谷崎潤一郎賞、’96年『白道』で芸術選奨、2001年に『場所』で野間文芸賞を受賞。文化功労者
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
202
奇しくも当時、映画公開日に読了しました。映画化されることは知っていましたが、まさか読んだその日が公開日だとは全く知らず、偶然ってスゴいなと思いました。さて、それはさておき内容ですが、「重い」です・・・。う~ん、とにかくひたすらトーンが低いというか暗いというか・・・。確かに内容が内容なだけに明るい作品であるワケがないのですが、それにしても200Pちょっとの作品にこんなにも「重さ」を感じなければならないのかと思うほどの筆力でした。明確ではありませんが、改めて「女性の生き方」のひとつとして考えさせられました。2013/08/31
優希
105
女性の情欲の絡み合う不倫ものを描いた短編集ですが、いやらしさを感じないのが不思議です。むしろ美しさすら感じてしまう。愛欲の世界でも不快の色が見えないのです。短編ながらも長編のような感覚に陥りました。2017/07/26
ゴンゾウ@新潮部
103
世間一般の道徳観や秩序の枠内では許されない三角関係。お互いの存在を意識しながらも決して境界線を踏み越えてはならない。前に進むことも許されない。そんな苦しい関係の中にも愛を貫く姿になぜかしら心を打たれてしまう。表題作の夏の終わりはとてもとても切なくて美しい。2017/06/10
じいじ
84
【再読】一編の小説を読むなかで、途中ダレてひと休みできるところが何か所かあるものだ。本作には、まったくそれがなかった。隅から隅まで寂聴さんの「魂」が込められて描かれている。読了して、しばし呆然の満足感。内容は、読友さんが多数紹介しているのでお任せしたい。ひと言で言えば女の情念と愛欲がややこしく絡み合う不倫小説であるが、それが不快感、不浄感を感じさせないのは著者の筆致力によるのだろう。四編の連作短編+短編、224頁の作品だが、500頁超の長編を読み終えた充実感である。2017/02/25
佐島楓
73
女性としての生き方では最も破滅的な部類に属するのではないかと思う。恋愛が自罰的すぎてつらい。実の娘に「お母さんは死んじゃった」と言われる胸中は察するに余りある。 2017/03/22