内容説明
子どもたちがみな独立し、丘の上の家に残ったのは老夫婦だけ。四季の草花や小鳥を愛で、夕食の後にはハーモニカ演奏を楽しむ。娘から届く心こもる手紙、隣人との温かな往来、そして家族全員がそろう賑やかな正月。小さな孫の一人が大切にするうさぎのミミリーも、ときどき家に預けられて元気よくはね回る…老夫婦の飾らぬ日常と、その中に見出す喜びと感謝を綴る、シリーズ第七作。
著者等紹介
庄野潤三[ショウノジュンゾウ]
1921(大正10)年、大阪府生れ。九州帝大を2年で終え、海軍に入る。戦後、教職を経て朝日放送に勤め、小説を書き始める。’54(昭和29)年、「プールサイド小景」で芥川賞受賞。平穏な日常の危うさを描き、「第三の新人」の一人として活躍する。’60年の「静物」で新潮社文学賞、’65年の「夕べの雲」で読売文学賞、’72年の「明夫と良二」で赤い鳥文学賞、毎日出版文化賞を受賞。芸術院会員
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しろうさぎ
10
老夫婦の穏やかな日常。繰り返しの話題が多く、去年以前だったら途中で飽きたような気がするけれど「これから老いゆく日々を如何に生きるか」が切実な課題になりつつある現在は、指南書になりそう。アランの幸福論「幸福でありたければ、強い意志で幸福な心持ちを貫くこと」(読んだのが高校の頃なので記憶があやふやな解釈だが)を思い出す。多少体の不調や不快な出来事があっても、意識的に無視してやり過ごすのが肝要。2022/12/24
みっちゃんondrums
9
老作家の日記。老夫婦二人暮らしであるものの、子や孫のお誕生会を開き、宝塚を一緒に見に行き、贈り物のやり取りをし、手紙を書き、家族間とはいえ丁寧な付き合い方をする様子に、我が身を省みる。庭には鳥たちがやって来て、花が咲いたと喜び、夜はハーモニカを吹き、奥さんが歌う、なんという品のよさ。寝る前に読むのにぴったりの、よい感じの退屈さ、と言ったら失礼か。2014/07/03
きりぱい
8
変わらない日々の営みで、登場人物の年齢だけが少しずつ違ってくる。この巻はシリーズ七巻だそうで、順番をばらばらに読んでいる私としては、幼かったフーちゃんが中学2年生になっていて驚いたのだけど、どれから読んでもすぐ馴染めてしまうのが、庄野一家の世界。最後に江國香織との対談があってこれがよかった。庄野家の居間で話す写真があるのだけど、おお、ここが!と実見できたことが嬉しく、不精であまり物を置かないところが同じ身としては、「もののあるおうちって、素敵ですね・・」という江國の言葉に、庄野作品の本質をみた気がした。2011/09/04
みなず
7
ゆっくり、にっこりと、読み終える。5月中旬で終わったので、長女と一緒の日光旅行が読めず、残念。江國香織との対談に写真があり、書斎が私の想像通りで、庭の草花や小鳥達の気配が、伝わってくるようだ。2015/08/27
ほたぴょん
5
『プールサイド小景』『夕べの雲』の延長線上にある光景であるには違いないのだろうが、あのどこか不穏な、陥穽の上にある幸福、といった緊張感はなく、もちろん細やかではあるが、どこにでもありそうな老夫婦の日常をつづった日記になっている。小説じゃないんだからまあそうか、という気もするけど、一方でじゃあわざわざ日記を読む意味は、という気も。頻出する「ありがとう」に日々是感謝という文字を想起する。2020/01/23
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