感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
230
第32回(1954年)芥川賞。 あるサラリーマン一家の出来事を しっとりと描いた作品である。 プールサイドの風景から、突如 始まる青木家の出来事.. この切り替えが見事で印象的である。 突然 会社を首になった夫と その妻の 心理描写が 秀逸で、やわらかな文体が 心地良い 短編だった。2017/07/09
佐々陽太朗(K.Tsubota)
101
40年ぶりの再読。「家庭の危機というものは、台所の天窓にへばりついている守宮(やもり)のようなものだ」(舞踏) この言葉にイメージされる日常に潜む脆さ。幸福は斯くも脆く壊れやすい。表層は幸せに見えてたとしても内情はさにあらず。庄野氏が『舞踏』から『プールサイド小景』、さらに『静物』を著し、その後『夕べの雲』、さらに長き年月を経て『ピアノの音』に至るまでを見たとき、氏が幸福な家庭や平穏な日常を如何に大切に思い守ってこられたのかを想像する。あたりまえであることの難しさを考えさせられた。2018/04/13
喪中の寺ちゃん
95
素敵な本を読んだ。素敵なだけではない。面白いのだ。夕べ寝付けなくて読み始めたら止まらなくなってしまった。題名を見るとスカした小説に見えるが、主に家庭をテーマにした私小説短篇集である。庄野潤三の名は見た事があるという程度に知ってはいたが、関心を持った事は無かった。ところが先日、岡崎武志と山本善行の古本の本を読んだら、岡崎氏が大絶賛しておられた。氏は昔、庄野潤三全集を買って枕元に置いて眠り、翌朝頬擦りまでしたそうである。古本マニアにそこまでさせる庄野潤三の魅力にやっと興味が湧いた。(このレビューまだまだ続く)2018/11/27
hit4papa
92
7作品が収められた短編集。「舞踏」「蟹」「静物」と一女、二男の子のある夫婦の日常が切り取られており、他の作品も、多少の変化はあるものこの夫婦を軸とした私小説の趣きです。全ての作品を読み終えると、夫婦が哀しみを抱えているように映ります。夫が年若い女性に思いを寄せ始めたのを知り、そのことを打ち明けてくれないことに静かに打ちのめされる妻「舞踏」、夫の使い込みでクビになった理由に、夫婦の溝を実感する妻「プールサイド小景」、過去の不幸が見え隠れする家族のひととき「静物」。崩れ去ってしまいそうな危うさを感じます。2022/12/15
マエダ
82
いい小説を読んだことを確信できる読後感。20代の前半なら分からなかったであろう良さが段々とわかってくる感じがある。毒もあり30代、40代に非常におすすめできる一冊2018/05/24