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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
150
関東大震災後の日本の不穏な風景を描く。 ぬいと ふでの穏やかな語らいが好ましい。 孝二の内面の苦しみが 切ないが …差別と闘いながら、前を向く 孝二を 応援したい、そんな巻だった。2020/06/23
TATA
43
物語は収束に。七重もまちえもそれぞれの人生を歩む。そして小森の人々も。第六部で一旦の完了。続編としての第七部は少し時間をおいて読もう。こちらの作品、部落問題だけではなく我が国が体験した朝鮮問題、普通選挙、労使問題と大正デモクラシーという言葉で括られる様々な思想的な変化をつぶさに書ききっており、その時代の人々の感じた思想的な戸惑いがよく理解できました。あらためて、社会が成熟するためにも必要な時代だったのだと感じます。2019/08/27
James Hayashi
25
何が起因となっているのだろう。部落差別もそうだが、関東大震災後の朝鮮人虐殺。通常であれば因果関係がありそうなものだがそれは見えない。人々の心に根差す暗い部分。それが自分にはないと言い切れない。そんな嫌な面にも触れた大作である。最終巻へ。2020/11/21
ゆう
15
折しも正月の最中、大正十三年一月一日のくだりに取りかかる。水平社が設立され、その波は全国へと広がる。関東大震災が起こり、混乱の中で復興を遂げようと立ち上がりはじめた、時代の大きな変化を肌で感じるような年の明けである。いつでも孝二を温かく見守るぬいの姿に、理想の母像を見たように思う。2014/01/06
ぼちぼちいこか
11
いつの世も変わらないと思うことがある。権力を持った人間はその高みから回りを見下げていくらしい。その椅子がある限り「差別」は続く。孝二は権力の傘の下、拘留される。熊ちゃんの父は網走監獄に無期懲役を科せられている。子どもながら父の安否を気遣う気持ちに心が打たれた。そして七重も新郎がいない式にて気持ちが固まったに違いない。人権が本当に守られる日はやってくるのか。うなづけない自分。2017/11/30