出版社内容情報
合戦の最中、敵が壊そうとする橋を、自分の足を丸太代りに支えて片足を失った武士を描く表題作等、無名の武士の心ばえを捉えた14編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
金吾
30
○山本周五郎さんの武家物は大好きです。この本でも全編に山本さんの美学が詰まっています。どの話も面白かったですが、特に「三十二刻」「石ころ」「一人ならじ」がいいです。2024/11/22
tengen
26
追い出された新妻が婚家の大事に戻って来た(三十二刻)☆夫に隠し子!嫁いで間なしの登女は一旦その子を農家に預け面倒を見る(青嵐)☆相良からの求婚を断り戸田との縁談を受けた節子は結婚を前にして労咳になってしまう。そして相良の下で働く戸田は亡くなった(おばな沢)☆幽閉の身でありながら酒と暴力に明け暮れる本多政利。世話係となった長尾平三郎は政利に城下で屑拾いをさせる(茶摘み)☆彡三十二刻/殉死/夏草戦記/さるすべり/薯粥/石ころ/兵法者/一人ならじ/楯輿/柘榴/青嵐/おばな沢/茶摘は八十八夜から始まる/花の位置2025/02/10
そうたそ
26
★★★☆☆ 主に武家ものを収めた短編集。「楯輿」までの九編は発表時期が戦前~戦時中ということもあり、どこか訓示めいたものを感じる話が多く、現代からすれば清廉すぎやしまいかと思ってしまい、正直なところピンとこないものがほとんどだった。戦後に発表された「柘榴」からの四篇の方がむしろしっくりくるものがあった。夫婦の情のようなものが描かれる「柘榴」「青嵐」「おばな沢」は心にじんわりと染み渡ってくるし、「茶摘は八十八夜から始まる」はアル中の更生話かと思いきや、思いがけないしんみりとしたラストへ帰結するのが秀逸。2019/01/20
きょちょ
24
珍しく戦時中の作品が多く収録。その中では、「三十二刻」の妻の覚悟が良い。「殉死」も、阿吽の呼吸の友情が良いね。「夏草戦記」は何とも悲しい。「薯粥」は嫌味な作品で嫌い。表題作「一人ならじ」は、周五郎の得意とする男女関係。「柘榴」もそう。「青嵐」も周五郎らしく、赤塚不二夫が漫画にしそう。筋は想像できるがそれでも面白い。「茶摘みは~」は作りすぎなのだが、それもで面白く読め、これも赤塚不二夫が漫画にしそう。「花の位置」、うーむ、彼は戦時中軍部におもねるような作品は書かなかったと言っているのだが・・・。 ★★★2023/06/09
aponchan
19
山本周五郎氏短編集。一つ一つの作品が人間の本質的な部分を表しており、楽しみながら味わえた。作品の描かれている時代は様々だが、情景が読み手に見えるように描かれていると思う。また、氏の作品は読んでみたい。2022/10/04