出版社内容情報
若者たちの心に灯る希望、優しさ。無頼者たちの無償の善意を称えた表題作他、心温まる名品12編。
抜け荷(密貿易)の拠点、深川安楽亭にたむろする命知らずの無頼な若者たちが、恋人の身請金を盗み出して袋叩きにされたお店者に示す命がけの無償の善意を、不気味な雰囲気をたたえた文章のうちに描いた表題作。完成されたものとしては著者最後の作品となった「枡落し」。ほかに「内蔵允留守」「おかよ」「水の下の石」「百足ちがい」「あすなろう」「十八条乙」など全12編を収録する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nakanaka
73
12編から成る短編集。良作揃いの短編集でした。表題の「深川安楽亭」はダーティな組織のつかの間の善行といった内容で面白かったのですが、ユーモラスな話の「百足ちがい」が特に面白かったです。どんなに気に食わないことがあっても我慢し、三年経っても腹の虫が治まらなければ直談判しに行くという変わり者の話。よくこんなストーリーを考えつくなという驚きしかありません。 また遺作の「枡落し」若い男女の将来への希望とその母親の過去への後悔という対象的な構図が印象的な作品でした。2022/11/11
じいじ
72
12の短篇それぞれ個性に富んでいるので飽きません。少し長めの80頁の表題作は、全体が昏く重いのであまり人気ないようですが、敢えて私はこれを押します。無闇に人を殺めるのはいけませんが、裏稼業の「ぬけに」を邪魔する奴は、やむを得ない場合は、岡っ引きであろうと容赦しません。「持ちつもたれつの相談」に乗っていただけないときは死んでいただきます。「深川安楽亭」は命知らずの男たちのたまり場。そこを舞台に繰り広げられる人間模様が私は好きです。2024/10/16
タツ フカガワ
54
再読。剣の奥義を極めようと訪ねた師は長らく留守中。若い剣士は、たまたま知り合った老農夫からやがて人生の奥義を教えられるという「内蔵允留守」。「真説吝嗇記」は、素面なら普通の人、酒を飲めば十五人分の仕事をする侍が、ケチで有名な甥に嫁を紹介したところ、とんでもない吝嗇夫婦が出来上がるという滑稽物。深川のはずれにある居酒屋「安楽亭」。一見の客は入れないこの店の裏には世間からはみ出した若者たちが居ついていたノワール色漂う表題作ほか、趣向に富んだ12編の短編集。何度読んでも面白い。2023/11/02
優希
53
戦前から戦後までの短編集でした。どの作品も人情もので、人と人との繋がりを考えさせられます。一話一話が長編小説のような読み応えがありました。味わい深い人情噺と言えますね。2025/04/23
おか
38
さすが 山本周五郎 男を描かせても 女を描かせても 良いですねぇ。甲乙つけがたく。。。勿論表題作の「深川安楽亭」も漢の心根がたまらなく!でも 「おかよ」も捨てがたい、この女心 私もこんな女になりたかった と言うより こんな心持ちにさせる漢に巡り合いたかった。それから「あすなろう」も捨てがたい!!!って結局全てが良いという結論です。次は何を読もうかしら。。。2025/04/14
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