内容説明
戦国の争乱期、南蛮貿易で栄える堺は、今井宗久や千利休らによって自治が守られていた。その財に目をつけた織田信長は堺衆と緊密な関係に。今井家の小僧助左衛門は信長に憧れ貿易業を志す。しかし信長の死後、豊臣秀吉の圧政で堺は血に塗れる。自らの自も危機に瀕した助左衛門は、全てを捨てルソンへ―。財力を以て為政者と対峙し、海外に雄飛していった男の気概と夢を描く歴史長編。
著者等紹介
城山三郎[シロヤマサブロウ]
1927‐2007。名古屋生れ。海軍特別幹部練習生として終戦を迎える。一橋大学を卒業後、愛知学芸大に奉職し、景気論等を担当。1957(昭和32)年、『輸出』で文学界新人賞を、翌年『総会屋錦城』で直木賞を受賞し、経済小説の開拓者となる。吉川英治文学賞、毎日出版文化賞を受賞した『落日燃ゆ』の他、2002(平成14)年、経済小説の分野を確立した業績で朝日賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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佐々陽太朗(K.Tsubota)
111
NHKで『黄金の日日』が大河ドラマとして放映されたのは1978年の1月から12月までのこと。私が高校二年生から三年生にかけてのことであった。その前作『花神』の大村益次郎にも心躍らされたものであったが、六代目・市川染五郎が演じた呂宋助左衛門が私の中でのヒーローであった。つまり「武」ではなく「知」を武器に活躍するヒーローを私は望んでいたのだ。幼稚園、小学校と体が小さくひ弱であった私にとって、戦国の武将はおろかスポーツ選手も心の底ではヒーローにはなり得なかったのだ。室町時代、戦国時代を経済小説として描いた良書。2018/04/22
たんかれ~
38
戦国時代に実在したけど謎の多い人物・呂宋助左衛門。作中では堺の商人として描かれ、商売一本で信長や秀吉といった武将達や堺の商人や茶人達とダイナミックに渡り合っています。ストーリー自体も面白いし当時の商人と武将の関わり方や、茶道や茶器のステイタスの高さなど勉強になりました。NHK大河ドラマ向けに書かれた作品とのこと。ドラマ見てみたい。2018/01/22
優希
37
堺商人から見た戦国の世といえるでしょう。2023/04/20
たま
32
1978年放送の大河ドラマ(現在再放送中だとか)と同年に出版された本。ドラマと本のおかげでそれまでの戦国時代のイメージがかなり変わったのではないだろうか。信長による堺の包囲から大坂夏の陣での堺の大火までの約半世紀、堺の商人たちが信長や秀吉らに翻弄されつつも商い(呂宋助左衛門が主人公なので海外貿易も)と茶の湯の力で権力に食い込んだり意地で対抗したりするさまが描かれる。茶の湯がなんとも不思議だ。茶を点てたり、歌仙を巻いたり、時代が対等の社交のルールを求めていたと言うことなのだろう。2021/04/27
春霞
31
戦国時代の堺を舞台に経済力と茶の湯で、織田信長や豊臣秀吉と対峙した豪商 呂宋(ルソン)助左衛門ら堺衆の物語。石田三成、千利休、石川五右衛門等も登場です。初めは憎めない好人物の秀吉ですが、天下人になってからは、本当、嫌な奴へと豹変します。その秀吉に追われ、フィリピンへ逃れる助左衛門ですが、今から400年以上も昔にフィリピン、カンボジアと世界で活躍していた日本人がいたことに清冽な驚きを覚えました。 戦国という動乱期に商人による自治で栄えた堺が徳川時代を前にして、徐々にその輝きを失っていく姿と対照的でした。2022/03/13