内容説明
近代日本最大の経済人渋沢栄一のダイナミックな人間形成の劇を、幕末維新の激動の中に描く雄大な伝記文学。武州血洗島の一農夫に生れた栄一は、尊王攘夷の運動に身を投じて異人居留地の横浜焼打ちを企てるが、中止に終った後、思いがけない機縁から、打倒の相手であった一橋家につかえ、一橋慶喜の弟の随員としてフランスに行き、その地で大政奉還を迎えることになる。
著者等紹介
城山三郎[シロヤマサブロウ]
1927(昭和2)年、名古屋生れ。海軍特別幹部練習生として終戦を迎えた。一橋大卒業後、愛知学芸大に奉職、景気論等を担当。’57年、『輸出』により文学界新人賞、翌年『総会屋錦城』で直木賞を受け、経済小説の開拓者となる。吉川英治文学賞、毎日出版文化賞受賞の『落日燃ゆ』等、多彩な作品群は幅広い読者を持つ。2002(平成14)年、経済小説の分野を確立した業績で朝日賞を受賞
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
三代目 びあだいまおう
300
500社以上の会社設立に関与し、日本資本主義の父と称される明治の偉人『渋沢栄一』の伝記的な歴史小説。上巻は江戸末期の混乱極める情勢の中、攘夷に沸く維新傑物らとは異なる路線で未来を憂い新しい日本を作ろうと動き始めるまで。後の獅子奮迅の活躍の源が芽吹くのがよくわかる。最後の将軍慶喜との出会い、外国に対するパラダイムシフトが最も強い原動力となる。渋沢栄一像に迫れる良書!「その気になればいくらでも自分に向く仕事を創り出せそうであった。仕事は与えられるものではない。創り出すものなのだ(本文)」栄一の開眼の瞬間である2020/06/23
ゲンキ
132
2021年の大河ドラマの主人公ということで、本書を読んでみました。凄く良かったです。城山さんの作品は、読みやすいし、中身もあるから、グイグイ引き込まれます。でも、渋沢栄一について、私は全く無知でした。幕末から生きてみえた方とは😅。その渋沢栄一の人生は、徳川慶喜や西郷隆盛、新撰組の近藤勇、勝海舟、大隈重信等のビップな方と出逢うことによって、大きく変わっていくこととなる。下巻が楽しみです😆。2021/02/21
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
100
大河ドラマは見ていないが、以前から気になる人物であったのでこれを機会に手に取った。三井や岩崎(三菱)が己の財を成すことに熱心であったのに対して、日本全体の経済、産業を興すことに注力した人物と言う印象である。ただ前半はまだ「尊王攘夷」を志したものの、何をどうすべきか迷いうろうろしているだけで、歴史の片隅にも顔を出さず、彼本来の良さは見えていない。むしろ彼が仕える事になった一橋慶喜の英名さの方が目立つ。大政奉還が終わり、新しい時代なってようやく彼の本領が発揮され始めた感じ。前半はイントロ、後半に期待します。2021/04/09
sayan
71
社会企業やCSVといったキーワードから手に取った小説。いちいちそうだなあと、腹落ちする文言はあるなかでp.420事業というものは、多勢の資本を持寄って力を合わせてやった方が、効果があがる、という発想がどこから来たのか、その原体験に物凄く興味を持った。また、大隈がp.434で、「八百万の神達、神計りに計りたまえという文句を、君は知っているか」と言う箇所は起業家を思わせる内容そのもので面白い。幕末あたりは、正直、個人を過度にヒーロー扱いする風潮にどうにも食わず嫌いで敬遠していたが、もう少し色々と読んでみよう。2015/12/03
shincha
67
新紙幣が発行されたタイミングで、偶然手に取った本書。城山さんの作品だから購入しただけで、誰の事を書いているのかを知らずに読み始めた。幕末に生まれた渋沢栄一の伝記的な物語。新紙幣は見かけただけで、まだ、財布に入っていないが、本書を読んだ後に手に入れよう。日本の経済の父と言われている渋沢栄一がどんな人生を歩んでいたのか、ゆっくり読ませてもらおう。上巻は、生まれてから2年間のフランス留学から帰り、新政府に引き抜かれる時代まで。深谷の豪農が、なぜ徳川慶喜に仕えていたのか…など激動の人生を垣間見た。下巻に進みます。2024/07/16