感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
84
複数の毒性物質の人体への影響を本にしたという意味では時代に先駆けた本だったように思う。昭和50年前後に環境問題を世に投げかけた本という意味ではすごいとは思うが、当時の私にはやや難解だった記憶しかない
さぜん
56
50年前の作品とは思えない。温暖化による気候変動や環境破壊は公害と同義ではないか。複合汚染は終わってはいない。冒頭、市川房枝と紀平悌子の参院選の応援に駆け回るルポからは想像しえない展開で、有吉佐和子しか書けない文学作品だった。自らの足と目と耳で取材、調査された事実。作者と共に驚愕し憤る読書体験は稀有だ。日本が成長するために多くのもが犠牲になり、利益重視で隠蔽される被害。本書に出てくる問題は継続しており、土も空気も水も新たな問題に直面している。無知の恐ろしさを改めて痛感する。ずっと読み継がれていくべき良書。2025/01/12
James Hayashi
43
ある編集者はこれを純文学に入れている。個人的にはルポと感じた。出だしは市川房枝や青島幸男の選挙戦で?と思ったが、環境汚染、有害物質、農薬や化学肥料などを扱いその恐ろしさを連想させる。これは朝日新聞の小説欄に連載され簡潔であり読みやすい。1974年に掲載されたもので、人々の意識はあまり高くなかったと言えよう。便利さや経済性を追求していくと、環境や人体への影響が少なからずある。それから40年以上経つが、電気自動車や有機野菜がもてはやされる時代。役人の無能さ、マスキー法と日本車、粉石鹸と合成洗剤など学べた。2018/03/24
Nobu A
30
有吉佐和子著書2冊目。75年刊行。当時朝日新聞の小説欄に約1年間連載されたものが書籍化。読み始めてレイチェル・カーソンを思い出したが、案の定「沈黙の春」を引用。日本でも環境汚染問題に警鐘を鳴らしていたとは。また人類誕生まで辿どり壮大。研究の賜物。反面、巻末の解説で至高の文学作品と称賛している点は違和感。小説とは虚構で登場人物と物語を通して立体的に学べるもの。本書は学術書宛ら。だったら無味乾燥だとしても研究者の書籍を読みたい。老人問題を扱った「恍惚の人」のように、物語の体を成したものを描くべきではと感じる。2025/01/27
みみぽん
29
先日、Eテレの有吉佐和子特集で紹介され「ぜひ読みたい!」と思った本。70年代はじめ。子供のころー工場の煙突からモクモクと吹き出る光化学スモックが社会問題になっていた。高度経済成長にともない食品や物質が多量生産され、そこに含まれる化学物質、農薬~『わたしたちは本当にそれでいいのか?』という永遠の問いかけを徹底的な取材と豊富なデータから著者が書き上げた問題提起。当時から50年近く経過しているけれど改善されたこともある反面、変わらぬどころかいつしか見てみぬふりになっている自分の生活を鑑みてゾクッと。永遠の書。2024/04/02