内容説明
私の胸中にはいくつかの川が流れている。幼き日に見た真間川、蕪村の愛した淀川、そして母の実家の前を流れる鏡川だ―。明治維新から大正、昭和初期までを逞しくも慎ましく生きた、自らの祖先。故郷・高知に息づいた人々の暮らしを追憶の筆致で描く。脱藩した母方血族、親族間の確執を恋慕、母が語ったある漢詩人の漂泊…。近代という奔流を、幼き日の情景に重ね合わせた抒情溢れる物語。
著者等紹介
安岡章太郎[ヤスオカショウタロウ]
1920(大正9)年、高知市生れ。慶大在学中に入営、結核を患う。戦後、カリエスを病みながら小説を書き始め、’53(昭和28)年「陰気な愉しみ」「悪い仲間」で芥川賞受賞。弱者の視点から卑近な日常に潜む虚妄を描き、吉行淳之介らと共に「第三の新人」と目された。’59年「海辺の光景」で芸術選奨と野間文芸賞、’81年「流離譚」で日本文学大賞、’91(平成3)年「伯父の墓地」で川端康成賞を受けた
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
momogaga
49
文学史では何度も目にしていたが、小説は初めて。土佐が舞台の私小説。血脈をテーマにしたものは久しぶり。もっと著者の事を知りたくなった1冊になりました。2018/08/05
fseigojp
26
明治の漢詩人の鬱屈が飄々と描写され 一族へのオマージュとなっている2015/10/11
さきん
21
土佐藩の人脈が浮き上がってきた。自分の母方の先祖も土佐の郷士であるから興味深く読んだ。明治時代になって土佐で武士としての俸給なしに自活するのは非常に難しいことが良く分かった。2017/03/04
S.Mori
16
『鏡川』は作者の母方の祖先のことを描いた小説です。高知県知事の丸岡莞爾と漢詩西山麓人のことが書かれています。『鏡川』という題名がこの小説の主題をうまく表現しています。人の人生を川面に映しだす川の流れはとどまることなく海へ流れていきます。西山麓人は定職につかず、貧乏なまま死んでいきました。そんな人生でも川と同じように始まりがあり、終わりがあります。ユーモアとペーソスが感じられる西山の描き方は、作者の他の作品に通じるものがあります。だめな人生であっても海へたどり着ける。海は命の源なので、ここに救いがあります。2020/02/26
やいっち
15
数年前、自宅にあった『流離譚』 を再読して改めて感銘を受け、その続編(姉妹編)があると知り、何とか読みたいと念願していた本。これはこれで悪くはなかったが、『流離譚』ほどの重厚感がなかった。それにしても、自分がそんな若いころに、『流離譚』のような読み応えのある、当時としては安くはない本を蔵書に加えていたとは、自分を見直したくなるような……なんて。2016/11/04
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