内容説明
かつてチャイルド・ポルノ疑惑を招いて消えた映画企画があった。それから30年、小説家の私は、その仲間と美しき国際派女優に再会。そして、ポオの詩篇に息づく永遠の少女アナベル・リイへの憧れを、再度の映画制作に託そうと決意するのだが。破天荒な目論見へ突き進む「おかしな老人」たちを描く、不敵なる大江版「ロリータ」。
著者等紹介
大江健三郎[オオエケンザブロウ]
1935(昭和10)年、愛媛県生れ。東京大学仏文科卒業。在学中に「奇妙な仕事」で注目され、’58年「飼育」で芥川賞を受賞。以後、常に現代文学の最先端に位置して作品を発表する。’94(平成6)年、ノーベル文学賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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かみぶくろ
41
2.5/5.0 この人の作品は修行感もありつつなんだかんだでテーマに感銘を受けたり文章に感動したりするんですけど、本作はそういうのがなかったですね・・。作中の老人たちをみて、老いることの不可避さに憂鬱な気分になりました。少女への憧れや郷愁もなんか不気味に感じましたね。2025/01/03
ヴェネツィア
22
一見したところは私小説風に書かれている。しかし、物語の核をなすヒロインのサクラさんは、その存在自体がどうやらフィクションのようなのだ。しかも、大江にとってはきわめて重要な「メイスケさん」や長男の光までをもメタフィクションに巻き込んでいく。大江文学の新しい表現の方法がここにあると見るべきなのだろうか。今すぐには、どう評価していいのか悩むところ。2012/04/27
松本直哉
21
『万延元年』を女性の視点で語り直したものと言えようか。中世ドイツの市民の叛乱における女性の役割の見直しから、幕末の四国の村の女性たちの叛乱、その結果の強姦と輪姦、彼女らの怒りと嘆きが、20世紀に生きる一人の女性、彼女自身も少女時代の性暴力で一生消えない傷を捺され、大人になってからも恐ろしいセカンドレイプに晒される女性の嘆きと響きあい、それらの輻輳する声が一つの映画の制作の試みと頓挫、さらに年月を経てもう一つの映画の試みへとつながっていく。生き残ったロリータの、苦しみあがきながらの回復の道程に胸がふさがる。2025/07/30
kaze
13
メイスケ母に「良かったか」と聞いたのは大江健三郎自身ではなかったか。彼の残酷性ではないのか。サクラさんの快復の物語とみる向きもあるようだが、私には三者三様の老醜にしかみえなかった。2022/10/15
モリータ
13
古い方から読むという原則はどっかに行きましたが、さっと読めました。2015/12/18




