出版社内容情報
遠藤 周作[エンドウ シュウサク]
著・文・その他
内容説明
不幸に襲われたとき、心のよりどころになるものは何か。老いて死を間近に感じたとき、不安から救ってくれるものは何か。生涯をかけて厳しく宗教を追求してきた著者は、実人生の中で、傍らにいる妻の苦悩と哀しみを受け入れるために、信仰とは相反する行動に出た…。生身の人間だけが持ちうる愛と赦しの感情を描いた表題作ほか、心の光と闇の間で逡巡する人間の姿を描いた短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
96
表題作について。ほっこりと言うか、奥方は著者のことがとってもとっても好きであることがとある執念を通して伝わってきました。著者も著者でなんだかんだで奥方の気持ちが分かってるくせに邪険になんかしちゃってもう、ったくシャイなんじゃないのぉ?と揶揄したくなりましたwww。2023/06/01
優希
55
何故自分はクリスチャンなのか。大きな不安に襲われたとき、不安から助けてくれたのは誰か。そんなことを考えさせられました。心に光と闇の間でふらつくでしょうが、クリスチャンとして、今後も生きていくのです。2021/05/07
活字の旅遊人
47
遠藤周作に関しては、どうも連続して読んでしまう。僕は生活全般において、次は別のもの、を求めてしまう。よく結婚でき、維持できていると思うが、小説に関して、遠藤周作は今のところ別格。全五作の短編集だが、巻頭の表題作から四つは現代物で、作家自身の隠れた心理を炙り出しているように思う。どれも身に迫るが、特に「六十歳の男」はアラフィフの我が身に重ねてしまう。若い女性に注いでしまう視線。老いていく身の、その奥にあるものをここまで赤裸々に、かつ美しく描くとは。ラストの「日本の聖女」は「鉄の首枷」「宿敵」に連なる歴史物。2022/05/31
ビイーン
38
敬虔なキリスト教徒である著者の作品は、宗教の枠にこだわらない普遍性があるように感じる。この本も人の深層心理や無意識の中にあるものを考えるキッカケを与えてくれる。2022/07/08
じいじ
29
表題作を含む5編の短篇。主人公は著者自身である。『夫婦の一日』が面白い。「妻がだまされた・・・」で始まる22頁に、夫婦(男と女)のモノの考え方の違い、人情の機微が凝縮されている。或る日突然、妻から「鳥取へ一緒にお水と砂を獲りに行ってほしい」と懇願される。占師のお告げだと言う。主人公は、長年生活を共にしたこの女が一瞬見知らぬ女になった恐怖さえ感じる。(遠藤夫妻は熱烈なクリスチャン)。『六十歳の男』も味がある作品。表参道裏通りのよく行く喫茶店の窓際に座って女子高校生の生態をを観察する話。楽しめる一冊である。2014/12/24
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