内容説明
遠藤周作の心に刻まれた記憶や体験、また『沈黙』『侍』等の作品をとおして、母なる宗教、慈愛に満ちた人生の同伴者としてのイエス像が浮かびあがる。“近代文学とキリスト教”に造詣の深い佐藤泰正の真摯な問いに答えて、文学、思想、信仰、生活のすべてを語る対話。
目次
東方と西方の狭間で
「沼地」の影と光
同伴者の発見
「アウシュヴィッツ以後」の悪の問題
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ネギっ子gen
53
【グローバルということは、根源的ということ】カトリック作家として、『海と毒薬』『沈黙』『深い河』など重厚な小説を発表し続けた遠藤周作。評論家・佐藤泰正を聞き手に、母の存在と受洗、フランス留学時代などを語り、“人生の同伴者”としてのキリストという到達点を提示。巻末に年譜。「あとがき」<しばしば漱石と遠藤氏を対比的に語っているが、立場は違うがその留学体験を含めて、この近代日本という風土を対象化しつつ、その精神の所在、“信”の所在を誠実に、深く問い続けた作家として、両者には深く通底するものがあろう>。確かに!⇒2023/02/03
Carlyuke
40
図書館で単行本。遠藤作品の英訳者ヴァン・ゲッセルの講演を通じて遠藤周作の本に改めて触れてみたくなった。 遠藤氏の子供時代のことや, 代表作の背景について知ることができた。遠藤氏が早い段階でユングと出会っていたことを確認できたことは一つの収穫だった。 評論家の佐藤泰正氏もクリスチャンだと知った。 遠藤氏の作品は日本では著者の意図の通りに理解されないという悩みを持っているということ。 他のキリスト教作家と読みたい作品が出てきた。ドストエフスキーの偉大さも。ハードルが高いが人生を終える前には読了したい。2025/05/19
lily
14
2023年は遠藤周作生誕100周年ということで、著作が自身の思想を語った一冊を読了。キリスト教文学の第一人者として遠藤が描いたイエスは本家本元のカトリックからは異様に映るそうだが、神の子としての高邁なイエスではなく人々に寄り添うイエスは受け入れやすく、キリスト教を身近に感じさせた功労者と言えるだろう。宗教と文学は二律背反でなく二律相関という指摘には首肯した。敬愛する遠藤の著作はひとしきり読んだが、次は『鉄の首枷~小西行長伝』が楽しみ。2023/07/10
Seele
6
私が”読んだ”と言える遠藤周作の作品は、「沈黙」「深い河」「イエスの生涯」「キリストの誕生」程度。どちらかというと、エッセイが主だった。それでも作家が、自作と自らの執筆動機、作品について、ここまで語るものかと、ある意味感心しつつ、驚きもする。著者を知る本でもあり、著書のガイド。
ふくみみ
4
実家の犬が夜泣きしたとき身体をくっつけて落ち着いて寝るまで読んでました。遠藤周作が自作を振り返る対談ですが、それぞれの作品のクライマックスも引用されてるので、未読作品のガイドとしても優れた本だと思います。2011/05/21