感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
169
「女房がこわいとは日本男児の恥じゃないか」…飲み屋で絡んできた初老の男は、日頃から酒の肴がないといっては妻を怒鳴る。妻はそれが当たり前の夫婦だと思いつつ時おり空虚感に襲われる。父に隠れて適度に遊ぶ娘は、左翼ぶって変な言葉を使う青年たちにまつわり付かれ…こりゃけっこう重いテーマだ。作者はそれを笑えるように書いている。妻が別の男に惹かれて悩む場面では、必ずといっていいほど便秘やオナラの話になる。男女逆転という実存的ドラマもここではむしろ閉塞感の打破…笑ってすっきりの素。フローベールやカフカにもこれは書けまい。2020/10/22
優希
95
面白かったです。周作先生のユーモア小説。ジェンダー系の話をここまで笑える作品にしてしまったかという感じがしました。書かれた当時の世相のアイロニーを見事に風刺していますね。昭和40年代でも女性上位、男性の女性化が見られていたようですから、現代の男女を見たらどう思うか気になるところです。2017/05/18
Midori Nozawa
16
昭和44年初出。48年14刷(単行本)で読みました。遠藤氏は「海と毒薬」「沈黙」などの作品に代表されますが、他方本書のような軽い作品もあります。本書では昭和40年頃の世相が反映され、全学連、水爆実験が軸になっているようです。放射能を浴びると生き物の性に影響がでるという仮定のもと、実験場近くの鶏を闇鍋で食べた男女の変化とは。狐狸庵先生の文の面白さにぐいぐい引っ張られて、読み終えました。思わず笑ってしまう一方で、処理法も分からない核を使い続ける人間の傲慢さを強く思います。2021/09/30
桜もち 太郎
7
細かいフォントで文字数が多いにかかわらずスイスイ読めました。物語の時代は戦後20年ということから昭和40年あたりのお話でしょう。まだジェンダーという概念がなく、それを面白おかしく取り扱っています。放射能の影響で性が逆転してしまうという発想は、現代ではなかなか小説の題材としてはタブーなのかもしれません。しかし「風呂、メシ、寝る」と頑固一徹で口うるさい父親が女性化してしまうくだりはやはりユーモアを感じてしまいます。結局は治療によって元に戻りますが、中村という学生は元に戻ることを拒みます。→2020/01/02
ロバくん
5
読んで楽しむユーモア小説。 発行が昭和48年となっており、その頃からすでに、男性が女性っぽく、女性は男性っぽくなってきているということがあったのですね。 昔ながらの気質の男が中心となって話が展開するのですが、最後に妻が、そんな態度しかできない夫に対して、やさしさの存在に気付くことが救われました。 やさしさを素直に表現するのは、なかなk恥ずかしいこともありますから。 そう思うことが既に、昔気質なのでしょうか?2016/11/16