出版社内容情報
愚かだとわらうのはたやすい。だが、男たちは懸命に自然と闘ったのだ。
日露戦争前夜、厳寒の八甲田山中で過酷な人体実験が強いられた。神田大尉が率いる青森5聯隊は雪中で進退を協議しているとき、大隊長が突然“前進”の命令を下し、指揮系統の混乱から、ついには199名の死者を出す。少数精鋭の徳島大尉が率いる弘前31聯隊は210余キロ、11日間にわたる全行程を完全に踏破する。両隊を対比して、自然と人間の闘いを迫真の筆で描く長編小説。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
557
やるせない想いでいっぱいになりながら読みきった。時代やお国に違いこそあれ、我が夫も元軍人。上官の命令はたとえそれが理不尽であろうとも「絶対」の社会なのだ。わたしには軍のランクはおなじみであったが、慣れないとそこが読みにくい要因になったかも。大尉、中尉あたりは紙一重的な重みだが、それが大尉と少佐になると、マリアナ海溝よりも深い溝があるように当時は感じていた。神田大尉の無念さが、読後もズッシリと胸に残る作品であった。2019/02/18
ehirano1
315
初読では2月頃に読んだせいで寒気が爆増した記憶があります(苦笑)。それはいいとして、「自然と云う極限状況における人間の行動」というものを改めて思い知らされます。しかし本書の映画版は創価学会の創生背景と係わりがあるということを佐藤優氏が解説していて、はぁ~となりました。こういう読み方がいつか出来るようになりたいなぁと思います。2022/05/14
はじめさん
177
夏は冒険! 令和3年8月29日(日)「八甲田山死の彷徨」でオンラインブッククラブ開催します。強行された計画は、昨今の五輪やコロナと重なる?💂♀️💂♀️💂♀️🏔夏をひんやりする読書体験。八月・山の日・冒険小説 https://bookmeter.com/events/86322014/09/21
Tanaka
161
リーダーシップって大事。2013/04/17
absinthe
158
新田次郎は大学山岳部の遠い先輩に当たる。(会ったことはないけれど。)計画に無理がありすぎるとどうなるか、また、うまく進んでないという報告を無視するとどうなるか、また非常時に安易に推測だけを頼りにするとどうなるか。教えてくれる本。でも、後から批判するだけなら簡単だ。この教訓をいざというとき生かせるか、深く考えさせられた。 トップが無能だったと切り捨てるのは簡単だけど、人間ならだれでも陥りがちな教訓に満ちている。