内容説明
モノカミ教団が支配する世界から、幻の国アマノンに布教のため派遣された宣教師団。バリヤの突破に成功した唯一の宣教師Pを持っていたのは、一切の思想や観念を受け容れない女性国だった。男を排除し生殖は人工受精によって行われるこの国に〈男〉と〈女〉を復活させるべく,Pは「オッス革命」の遂行に奮闘するが…。究極の女性化社会で繰り広げられる、性と宗教と革命の大冒険。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
229
SF仕立ての長編。倉橋由美子の小説にしては冗長な感が否めない。物語の構想は「女護が島」伝承を軸に『源氏物語』(主人公Pは当然光源氏そしてヒメコは若紫だ)、そして自らの小品(『最後から二番目の毒想』に収録されていた「自殺薬」)から得た着想を元に組み立てたもの。最初から厳密に構想されていたとは思えず、そして結局、最後には物語の破綻を招くことになった。全体としては一種のユートピア小説とも、また逆に反ユートピア小説とも読める。物語としてけっして面白くないわけではないが、残念ながら私たちが倉橋に求めるそれではない。2015/10/05
メタボン
33
☆☆☆☆ この2年前に発行された筒井康隆の「虚構船団」とともに、私が注目していた大作。30年以上経過しやっと読むことが出来た。村田沙耶香が描くような性的なディストピアについて、圧倒的な構想力で書かれた先駆的な作品だと思う。物語の結末はいろいろと可能性があったと思われるが、性的にも政的にも「去勢」されるP=パパの絶倫の喪失という阿部定的なラストで締めくくった方が良かったと思う。大山鳴動によりアマノン国が崩壊するというシーンは唐突のように感じた。2020/04/16
りりす
23
女護が島、アマゾネスの伝承などが基になっているだろうお話。モノカミ教という名のキリスト教の一神教性と、次第に女性上位の国で男として君臨する主人公が重なる。着想はすごく面白いけど、主人公のどこにここまで成り上がる魅力があるのか、イモタル人間は登場の必要があったのか、ヒメコは結局のところイヴ的な女の記号でしかなかったのか、実際に男を排した世界では女は男性化せずに何処までも女を突き詰めるのではないか、など引っかかる点が残る。主人公については、男であるという理由だけで解決するのかもしれない(けど納得はしない)。2015/12/08
タリコ
14
冒頭から露骨なメタファー、と思われたものがラストに繋がる。宗教・政治・生殖・文化・差別など、それぞれの対象を理性的かつ冷笑的に裏返して見せつけられて、思わず眉を顰めたり苦笑いしたり。これぞ倉橋文学の真骨頂と言えそうな、おバカなブラックユーモアSF。付録のアマノン語辞典も楽しいです。2009/06/02
ふるい
11
面白かった。架空の女性国家を描いたものだけど、女性にも男性にも与せずなんなら人間の作る世界そのものを皮肉る著者の筆致が冴えまくってます。エピローグ、もしかして今までの話はアマノンの胎内で行われてたことなの…?イモタル人間とかヒメコの目的とか地下組織とかはなんだったのか(笑)。2020/02/15
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- 和書
- 仏教経典大鑑 - 傍訳