内容説明
どうにも暑くてやりきれない8月のある日、私はふと庭に咲く木槿の花に目を奪われた…悪戯っぽい少女と快活な少年と人生の達人である中年女性とが同居していた向田邦子を、純白の木槿の花に託して懐旧した随想を中心に、身辺で起きたヨシナシゴトを、時には絵描きの眼で、時には作家の眼で切り取りました。『男性自身』から精選したエッセイ60篇を収録。今回はちょっぴりしんみりさせます。
目次
一粒で三度
戦友
春の雨
蒼い目の日本人
向田邦子三回忌
寺山修司
今日出海先生
私の根本思想
戦後は遠く
わが偏見の数々
私の俳号
井伏先生の諧謔〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
mawaji
8
向田邦子没後40年関連図書ということで手に取りました。学生時代に読んだ「酒呑みの自己弁護」以来の山口瞳。テレビ界からぽっと出てきて文壇でぐいぐい頭角を表していく向田邦子との在りし日のエピソードの数々、どれも興味深くもちょっとしんみりしながら読みました。昭和の香り漂うエッセイは今ではもうじゅうぶんセクハラ認定される内容もあり、けっこう大御所の頑固オヤジのイメージがありますが、まだ50代の頃ということで今の私よりずいぶん若かったのだ。隣町のグループに連れて行かれた喪失感と嫉妬の気持ち、わかるような気がします。2021/10/27
Ha Kura
3
大事な誰かのことを表現するときは、こんなふうに簡潔で愛情深くあらわせるようになりたいもんです。
ロッキー
2
向田邦子さんへの想いを読みたくてこの本を買った。携帯もネットもない時代。飛行機墜落速報が流れてからのゴタゴタぶりが手に取るように書かれていた。この速報の後関係者はどんな思いで数日を過ごしたのか、想像しただけで切なくなった。仕事仲間の大の男が電話口で言葉に詰まる、男二人で色紙を書く、マスコミに頼まれて追悼コメントを考える。いかに向田さんが天性の人たらしだったかがわかった。巻末の木槿の花を読んでから、冒頭に戻って読み始める。山口作品は初めてだが歯に衣着せない簡潔明快な文章が好きになった。柳原さんの挿絵が抜群!2020/11/20
yu mi
1
向田邦子さんの本のあとに読んだため、彼女のことが書かれている最後の方にある「木蓮の花1〜8」を興味深く読んだ。 山口さんは向田さんを直木賞に推したことで早くに亡くなることになってしまったのではないかと責任を感じていたようだが、同業の戦友として、また一ファンとして大好きだった人の突然の訃報に心がかき乱されている事故後当時の様子がつぶさに書かれていて、読んでいて胸が苦しくなるほどだった。 2025/05/18
Peter-John
1
『木槿の花』は山口瞳への向田邦子への追悼文です。ひとりの人に惚れ込むというのはこういうことなのかと感嘆しました。向田は山口の作品では『世相講談』しか認めないとここには書かれています。だとしたら、つぎはそれを読むしかありません。2019/07/02




