内容説明
善良この上ない元巡査を殺害した犯人は誰か?そして前衛劇団の俳優と女事務員殺しの犯人は?今西刑事は東北地方の聞込み先で見かけた“ヌーボー・グループ”なる新進芸術家たちの動静を興味半分で見守るうちに断片的な事実が次第に脈絡を持ち始めたことに気付く…新進芸術家として栄光の座につこうとする青年の暗い過去を追う刑事の艱難辛苦を描く本格的推理長編である。
著者等紹介
松本清張[マツモトセイチョウ]
1909‐1992。小倉市(現・北九州市小倉北区)生れ。給仕、印刷工など種々の職を経て朝日新聞西部本社に入社。41歳で懸賞小説に応募、入選した『西郷札』が直木賞候補となり、1953(昭和28)年、『或る「小倉日記」伝』で芥川賞受賞。’58年の『点と線』は推理小説界に“社会派”の新風を生む。生涯を通じて旺盛な創作活動を展開し、その守備範囲は古代から現代まで多岐に亘った
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ykmmr (^_^)
202
今西の粘り強い操作に吉村が加わり、強力なコンビが出来る。それにより、事件は解決。推理がまた独特なんだが、ハンセン氏病と終戦時の戸籍変更の世情が、重要部分として吐出し、これが『社会派サスペンス』の投石であるんだろう。現代人の自分たちには、関わりすらない程遠い話題。この時代の世情が目の前には見えるが、実感はやはり難しい。2022/05/06
いおむ
186
面白かった!今西刑事がなかなか良いです。昭和中期の雰囲気も堪能出来た。ラストの空港がまた懐かしい演出で良い!これはやはり他の松本清張作品を読みたいですね。2018/03/11
Atsushi
158
昨日は、先の大戦の沖縄の犠牲者を悼む「慰霊の日」だった。追悼式で女子中学生が読み上げた平和を祈る詩に胸が打たれた。下巻を読了。戦後間もないこの国で、ハンセン病に蝕まれた千代吉と架空の人物に生まれ変わらねばならなかった秀夫親子の数奇な運命が時の流れを感じさせる。2018/06/24
イアン
150
★★★★★★★☆☆☆今西の執念が実を結び始める下巻。養子の申し出によりようやく被害者の身元が判明する。なぜ誰からも尊敬された元警官は東京へ向かい、殺されなければならなかったのか。言わずと知れた名作だが、正直犯行はトリッキーだし、犯人の昏い過去を描き切れていないし、推理も当てずっぽうに近い。しかしこの作品が一世を風靡し、後の偉大な作家たちの道標となったのもまた事実である。王貞治が現代の野球に出場したとしても大した成績は残せないかもしれないが、だからといって「王は偉大な選手ではなかった」とはならないのだから。2024/02/28
修一朗
132
業を背負った幼少期,ラスト40分を表現するため映画では大胆にエピソードを整理しているのが良く分かった。確かに鼻持ちならないヌーボーグループとか,古臭い女性の描かれようなんてのはなくてもいい。映画では大胆にラストを変更しており,大きな感動を呼ぶよう脚色されていることが良く分かった。玉木宏のTV版も観たけども,最も重要なテーマを外さざるを得ないので納得性のない動機にどうしてもなってしまうのが残念。一気に観ましたよ,やっぱり世の中の評判通り,映画>小説>TVドラマでした。。原作祭り,続く。。2018/12/14