内容説明
白昼の銀行を舞台に、巧妙に仕組まれた三千万円の手形詐欺。責任を一身に負って自殺した会計課長の厚い信任を得ていた萩崎は、学生時代の友人である新聞記者の応援を得て必死に手がかりを探る。二人は事件の背後にうごめく巨大な組織悪に徒手空拳で立ち向うが、せっかくの手がかりは次々に消え去ってしまう…。複雑怪奇な現代社会の悪の実体をあばき、鬼気迫る追及が展開する。
著者等紹介
松本清張[マツモトセイチョウ]
1909‐1992。福岡県小倉市(現・北九州市小倉北区)生れ。給仕、印刷工など種々の職を経て朝日新聞西部本社に入社。41歳で懸賞小説に応募、入選した『西郷札』が直木賞候補となり、1953(昭和28)年、『或る「小倉日記」伝』で芥川賞受賞。’58年の『点と線』は推理小説界に“社会派”の新風を生む。生涯を通じて旺盛な創作活動を展開し、その守備範囲は古代から現代まで多岐に亘った(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
73
昭和電業製作所は営業成績がかんばしくなく、内実は火の車、社員の給料を払うためツナギ資金の調達に苦労していた。だが、その弱みにつけ入られてパクリ屋一味に手形を詐取されてしまう。『眼の壁』は昭和32年に書かれた。当時の検察庁検事から、探偵小説というと捜査一課の話ばかりだが二課の分野も書いてみてはどうかと言われたことがきっかけだった。詐欺や横領といった事件は時代を越えた共通の闇を抱えている。『眼の壁』がかなり古い話で時代がかってはいるものの、違和感なくすんなり読めるのもそのためだろう。 2022/08/08
じいじ
69
読み出して間もなく、何時もの清張小説とは感触が違うと思った。その一番の理由が、ズブの素人探偵が犯罪のプロ組織、国会議員などのモサ連中に立ち向かうのだ。ときに歯痒くてイライラさせられる…、そこが面白いところなのだろう。作者の狙いとおりであるように思う。ここ2・3年前から再度読み始めた清張小説は、緊張感があって面白いので中々眠くならない、ついつい夜中の零時を超えてしまう。80歳を境に、体調維持のために、徹夜はご法度にしている。『点と線』と今作は、清張小説の「お気に入り」トップです。お薦めの1冊です。2025/01/26
ともくん
59
松本清張を読むと、いつも思うことがある。 物語を強引に、都合のいい方に持っていくということである。 本作でも、いくつも見受けられる。 しかし、それを感じさせない松本清張の筆力は凄いものがある。2019/09/26
ミッフー
57
今まで数多くの清張さん読んできました。でも、僕的には一番残念な本📖💦生意気すみません🙏化学会社に起きた手形詐欺事件。責任感じ自殺した課長の部下が主人公で犯人を追う物語。好きな清張さんの作品は必ずといっていい程事背景にあるは時代的貧困やエゴ、それから逃げる為、利己欲求満たす為起きてしまった犯罪、それを追う凄腕刑事。罪を憎んで人を憎まず的な内容が多いのだけど🤔それと比べ同本は貧困や男女の痴情絡れといったものとも無縁❗️単なる詐欺事件を素人が追いつめるだけの非常に内容の薄っぺらい間延びした小説でした😫2023/01/08
Hiroshi Ono
44
ドラマ化先読みシリーズ。恐らく学生時代に読んだ「点と線」以来の松本清張作品。1957年の書であり電話の取り次ぎや電報、特急「はと」など、現在とは全く異なるスピード感が逆に心地良い。加えていつものように地理感のない東京の記述以外は概ね知った土地ばかりなのも幸いし、正にきめ細かく点と線を繋ぎ合わせるような物語の組み立てには一気に引き込まれた。それにしても、主人公萩崎竜雄は会社勤めより刑事にでもなっていたほうが性に合っていたことだろう。本書を現代版ドラマにどう仕上げるのか、楽しみである。 ☆☆☆☆☆2022/05/14