内容説明
『白い巨塔』『不毛地帯』『二つの祖国』『大地の子』『沈まぬ太陽』『運命の人』…。常に時代を先取りし、社会問題を鋭く抉る超大作を世に問い続けてきた作家が語り尽くす取材秘話と執筆の裏側、そして「書き続ける理由」。半世紀にわたり、作家を突き動かしてきたものとは何か。山崎文学への理解が深まるエッセイ集。
目次
第1章 『運命の人』『沈まぬ太陽』―自作を語る(『運命の人』沖縄取材記;第四の権力・マスメディアを描きたい;沖縄への旅が私を変えた―『運命の人』と私 ほか)
第2章 『花のれん』、『白い巨塔』他―自作を語る(産声;ああ、もったいなぁ成駒屋はん;“土性っ骨”のある男に惚れる ほか)
第3章 『不毛地帯』、『二つの祖国』、『大地の子』―自作を語る(『不毛地帯』のシベリア;壹岐正にみる“戦争と平和”;戦後の日本人の歴史 ほか)
著者等紹介
山崎豊子[ヤマサキトヨコ]
1924(大正13)年、大阪市生れ。京都女子大学国文科卒業。毎日新聞大阪本社学芸部に勤務。その傍ら小説を書き始め、’57(昭和32)年に『暖簾』を刊行。翌年、『花のれん』により直木賞を受賞。新聞社を退社して作家生活に入る。著作はすべてベストセラーとなる。’91(平成3)年、菊池寛賞受賞。2009年『運命の人』を刊行。同書は毎日出版文化賞特別賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いつでも母さん
170
初めて読んだのは『白い巨塔』それから戦争3部作に『華麗なる一族』そして『沈まぬ太陽』・・骨太の作品を読むたびに、この作家の凄さをみせつけられてきた。生半可な気持ちでは向き合えぬ魂を感じてきた。今、『山崎豊子 自作を語る1』を読了し、「あゝ、やっぱりなぁ。」の思いを新たにし、「しっかりせよ!」と気合を入れて貰った気持ちになる。2020/08/20
雲をみるひと
24
山崎豊子の自著のレビューやインタビュー集。若手時代から晩年まで時代順に網羅されている。作者の思い入れや裏話がわかる貴重さはあるが、各小説を読む際に必要な情報とも言い切れない気がする。作者のディープな読者向けの作品だと思う。2024/06/27
博多のマコちん
7
山崎豊子作品の(一応の)愛読者である者として、なかなか読み応えのあるエッセイ集。山崎さんの作品は初期・中期(白い巨塔・華麗なる一族等)・後期(戦争三部作等)では作品の題材が変化しているが、共通しているのは山崎さんが目指した「人間ドラマ」の側面であり、この本ではそれら作品への山崎さんの思いが良く伝わってきた。それにしても後期の作品での山崎さんの「先の戦争」への怨念はすさまじい。今を生きる我々は、「青春」を奪われたあの世代の人達の思いを少しでも汲んで暮らしていかねばならないと改めて感じさせられる一冊でした。2020/12/20
アルクシ・ガイ
7
山崎豊子という作家は、まさしく体を使って(酷使して)小説を造形している(書いている、なんて生易しいもんじゃない)。取材にかける情熱だけでも、体が三つぐらい必要だろう。作者には及びもせぬが、読む方もそれなりの気構え無しでは読めない。実は既読の山崎豊子は「沈まぬ太陽」一作だけ。気力を充実させて、次の大作に取り組みたい。2016/10/10
しゃんしゃん
7
司馬遼太郎と並び、もっとも影響を受けた作家。最後半の数冊を除き読破。書くたびに物議をかもす事となるテーマ。それらに敢然と立ち向かうエネルギーの源とは何か?それはくだらない作品を書く事は読者に申し訳ない、との思いだ。10年の歳月を掛け取材と推敲を重ね作品を書き上げる稀有な作家。大感情で時に激怒、時に涙しながら筆を運ぶ。戦争の悲劇を繰り返さないそれを伝えること、それが生き残った者の使命と言う。全作品を再読した気分。内容充実のオススメ本です。2016/03/20