内容説明
「空の安全」をないがしろにし、利潤追求を第一とした経営。御巣鷹山の墜落は、起こるべくして起きた事故だった。政府は組織の建て直しを図るべく、新会長に国見正之の就任を要請。恩地は新設された会長室の部長に抜擢される。「きみの力を借りたい」。国見の真摯な説得が恩地を動かした。次第に白日の下にさらされる腐敗の構造。しかし、それは終わりなき暗闘の始まりでしかなかった…。
著者等紹介
山崎豊子[ヤマサキトヨコ]
1924(大正13)年、大阪市生れ。京都女子大国文科卒。毎日新聞社学芸部に勤務。当時、学芸部副部長であった井上靖のもとで記者としての訓練を受ける。勤務のかたわら小説を書きはじめ、’57(昭和32)年『暖簾』を刊行。翌年、『花のれん』により直木賞を受賞。新聞社を退社して作家生活に入る。’63年より連載をはじめた『白い巨塔』は鋭い社会性で話題を呼んだ。『不毛地帯』『二つの祖国』『大地の子』の戦争3部作の後、大作『沈まぬ太陽』を発表。’91(平成3)年、菊池寛賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mukimi
115
事故現場や社員から離れ日航企業と国政の中枢部へ話が移る。金と権力と女への欲にまみれた世界。その中で、危機に瀕す日航企業のトップに抜擢された紡績会社社長の真正直な理想主義が、周囲の腹黒さとコントラストをもって描かれる。何度も断った末に日航トップ就任を受諾した際の決意の言葉「二度目の徴兵が来た覚悟で」に考えさせられる。敗戦後の高度経済成長を支えたのはこのような日本人の捨て身の献身だったのかもしれない。令和の日本人を支える信条とは何だろうか。金と権力欲の蠢く国の中枢は少しでも改善しているのだろうか。2025/07/17
yoshida
113
会長室篇。国民航空では御巣鷹の事故により堂本社長が辞任。半官半民の組織であり、総理から三顧の礼で迎えられた、国見が会長となり新体制となる。繊維会社の会長を兼任し、所謂外部招聘の国見に異様な国民航空の実態が浮かび上がる。新たに新設された会長室。国見の依頼により恩地は会長室で働き始める。腐敗と利権、社員同士が組合を通じて反目する国民航空の酷さに驚く。利権を握り財を成すことと、社内政治にしか興味がない幹部達には、御巣鷹の事故への悔恨の気持ちが無い。国見体制は一期二年の約束。果たして、社内改革は成されるか。力作。2021/01/16
キムチ
83
圧巻の企業体質露呈。半沢モノが可愛らしく思えてくる。女性でここまで描く力に唸ってしまう。(ちょっとジェンダーだなぁ)もちろん、モデルを想定してのフィクションとしても、国家レベルの大企業の病んだ状況はいわば歯周病。組織メンバー個人レベルでは細部が解らず、○○象を撫でるようなものだろう。その中で英明を決しうる人の懐の素晴らしさは尊敬に値する。総理の引きがなければいくら国見といえども去就に迷うのではなかろうか。だが会社上層の秋月・美原・・岩合・三成・田丸等と組合の轟・権田・畑。2014/03/07
ぴー
79
物語りもいよいよ後半へ。第4巻は国見会長が主人公。国見会長の人なりや改革への思いが、行動や言葉を通してよく分かった。国見会長頑張って!…と言いたいが、国民航空の組織自体が完全に終わってる。キックバックという言葉は最近も聞いたことがあるような…。いつの時代も「金」か…。次回はついに最終巻!最後まで山﨑ワールドを楽しみたいです。2025/03/27
優希
72
会長室に入ることになった恩地。会長に就任した国見の抜擢によるものです。最初は真摯に見えていた風景も、次第に腐敗の色が見えてくるのに鳥肌が立ちました。まだ序盤ということで、今後何が起こるか不安にならずにいられません。最終巻にいきます。2022/06/15