出版社内容情報
女、酒、放浪。無頼を地で行く小説家の、壮絶な魂の記録。
「チチ帰った?」「うん帰ったよ」「もう、ドッコも行かん?」「うん、ドッコも行かん」「もう、ドッコも行く?」「うん、ドッコも行く」女たち、酒、とめどない放浪。崩壊寸前のわが家をよそに、小説家桂一雄のアテドない放埒は、一層激しさを加えた。けれども、次郎の死を迎えて、身辺にわかに寂寞が……。二十年を費し、死の床に完成した執念の遺作長編。〈読売文学賞・日本文学大賞受賞〉
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
じいじ
78
初読みの檀一雄の小説をこの一冊だけで、軽々にモノは言えないが、下巻に入っての主人公の放蕩ぶりは尋常ではなかった。この私小説のどこが真実で、どこが創作なのだとセンサクすることは、まったく無意味なのでやめます。著者が20年もの歳月を費やして、心魂を込めた小説であることは事実であるのだ。この小説を面白いか否かを判断するのは、読み手の勝手自由であろう。私自身は前半の上巻の方が、内容面で好きである。下巻は体力的に息切れして、途中何か所をとばした。体力的に自信があった2・30年前に読まなかったことを悔いています。2023/10/04
青蓮
78
上下巻合わせて1000頁近い大作。ほぼ実体験とされる作品。複数の愛人を持ってあっちへふらふら、こっちへふらふら。幾つもの家がありながら戻る家がなくまるでお尻に火がついたように巷間を狂い回ってまるで狂乱の呈。狂躁、放埓とも言える桂の生活は終盤になって酷く寂しいものに様変わりする。その寂寥や孤独はあらゆる煩悩、欲望を食い尽くした後のような、ある種の清浄さすら感じさせる。この作品を書いて檀一雄は逝去した。己の生き様を全てを紙の上に刻印して。全力で一時代を駆け抜けた彼は生きたいように生ききった。それが少し羨ましい2019/08/08
Tsuyoshi
64
上巻に引き続き酒、女性、料理、旅など嗜みつつフラフラしている主人公の日常が続いていき豪快ではあるものの新鮮味は感じず上巻でお腹一杯という感じだったが、唯一女性たちと別れ独りになって愛や孤独に関して自らを顧みる場面は豪放磊落な影に裏打ちされた本音が垣間見えた分、印象的だった。2018/06/02
i-miya
59
2013.12.11(12/11)(つづき)壇一雄著。 12/06 恵子。 私たち。 桂さん。 じゃあ、公演済んでから行くからね。 天神町の市場廻ったり、フグ、河豚の白子、アワビ、鯛、抱えきれないほど包み、抱え、躊躇わずに黒門近い「かん雪」の勝手口、敲く。 自由業のこの人たち、つなぎ船。 長崎へ行こう。 不実の人となる。 泣いても泣ききれない。 茂木Bホテル。 瀬野セイ。 2013/12/11
i-miya
54
2014.01.19(01/11)(つづき)壇一雄著。 01/19 (p309) 人生50年、私の会。 佐藤春夫先生ご夫妻。 おでんの鍋。 大洋漁業、鯨の尾肉。 胃のコムラガエリ。 随分前だが、坂口安吾さんが、「桂君、半生の借金の祟りがとうとう胃の腑まできちゃってね・・・」 私もそんなところだ。 ぶったおれた私、寝ていても・・・・。 呼びリン。 サト子、(末っ子)、「チチさん、なーに?、チチさん、なーに?」 「ハハさんを、ハハさんを」と言っているつもりだが、声にならない。 涎ばかり。 入院。 2014/01/19