出版社内容情報
貧困にあえぎながらも、向上心を失わず強く生きる一人の女性――日記風に書きとめた雑記帳をもとに構成した、著者の若き日の自伝。
第一次世界大戦後の困難な時代を背景に、一人の若い女性が飢えと貧困にあえぎ、下女、女中、カフェーの女給と職を転々としながらも、向上心を失うことなく強く生きる姿を描く。大正11年から5年間、日記ふうに書きとめた雑記帳をもとにまとめた著者の若き日の自叙伝。本書には、昭和5年に刊行された『放浪記』『続放浪記』、敗戦後に発表された『放浪記第三部』を併せて収めた。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
115
故、森光子さんの舞台での一場面が先行してしまい、明るいイメージを勝手に持っていたこの作品。ところが読んでみるとワーキングプア小説の先駆けだったので驚いた。しかもワーキングプアやダメンズ、男と暮らす事が安定への道信仰は今も殆ど、変わっていない所に苦笑。もうね、その日その日の浮草暮らしで生活の不安と何もない自分が嫌になるとか、家族にお金をせびる事になって申し訳ない気持ちとか、偉そうな口ばかりのヒモ男に寄生されても追い出せない悲しさとか、美味しいものや好きなものでちゃっかり、元気になるとかに共感せざるを得ません2018/12/10
優希
49
貧困に襲われても、向上心を忘れない姿が刺さりました。様々な職業を転々としながら必死で生きていく様子が日記風に書かれているので、単なる自叙伝としてではなく、現状が迫ってくるようでした。どこまでもヒリヒリするのに引き込まれずにいられませんでした。2022/03/30
まあちゃん
43
転職、貧窮、時々男。田舎から東京に出てきて、とにかく引っ切り無しに引っ越して、転職してる。いつもお腹をすかせてる。それでも古本を買い、国内外の文学を読み、詩やらお話しやらを書いては出版社から突っ返される。ひもじくなったら本を売る。この人と一緒になったら幸せだろうにっていう人は好きにならず、男運わろし。でもなんか憎めず自分のことのように心配し、彼女の一生ははたして幸せであったのかと思わせられる。つらくて寂しくてひもじい。わたしにひもじいことは無いから、まだましだ(笑)2014/08/01
James Hayashi
42
尾道を訪問予定なので著者を偲ぶ。失恋から描き始めたとも言われる放浪記。各地を転々としたのは養父の影響としても、本人の転職の数々は驚くほど。注解があるのでわかるが、知らない言葉など多く参考になり、当時の状況も見て取れる。赤貧洗うが如し。しかし奔放とした生き方は当時の市井の人々の憧れを抱かせたのかもしれない。流行作家になったらしいが、現在との格差を強く感じた。2019/03/10
りょう君
41
大正時代に書かれたエッセイ。と言うか、当時の日記からまとめられた著書。大正11年から大正15年のもの。女学校出の若い女性に似合わず余りに貧しく、ひもじい。関東大震災や詩人の白蓮の駆け落ちについても書かれている。明治から大正にかけての与謝野晶子や白蓮の情熱についても自分たちは知るべきで、作家の林芙美子についても同じかな・・ 2018/11/11