内容説明
極貧の家に生れた愛川吾一は、貧しさゆえに幼くして奉公に出される。やがて母親の死を期に、ただ一人上京した彼は、苦労の末、見習いを経て文選工となってゆく。厳しい境遇におかれながらも純真さを失わず、経済的にも精神的にも自立した人間になろうと努力する吾一少年のひたむきな姿。本書には、主人公吾一の青年期を躍動的に描いた六章を“路傍の石・付録”として併せ収める。
著者等紹介
山本有三[ヤマモトユウゾウ]
1887‐1974。栃木県生れ。東京帝大独文科卒。1920(大正9)年、戯曲「生命の冠」でデビュー。『嬰児殺し』で注目を集め、日本の新劇の基礎を固めた。大正末期から小説にも手を染め、『波』などの新聞小説で成功を収める。その後、ひたむきな女医を描いた『女の一生』、勤め人一家の愛と犠牲の日々を書いた『真実一路』、逆境をたくましく生きる少年を書いた『路傍の石』で国民的作家となった。子供達に向けて書かれた『心に太陽を持て』は、今も小・中学生に読まれている名作
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感想・レビュー
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遥かなる想い
287
同じ本を同年齢で読むのと、過ぎ去った後で ゆっくり読むのでは本当に違うという当たり前 のことを実感していた。 懐かしい歌を聴くと、その時代の日々が 蘇るのにも似て心地よい。 少年吾一の成長物語だが、ひどく眩しく 感じるのはなぜなのだろう..自分の意思とは 無関係に行き道が決められていた時代.. だが吾一の折り目正しさと潔癖さは 明治中期の 先人たちの気概も反映されて、読んでいると 背筋が伸びる気がする、そんな読書だった。2016/05/15
人間万事塞翁が馬ZAWAZAWA
112
姜尚中さんが、夏目漱石「こころ」、トーマスマン「魔の山」、井上靖「あすなろ物語」、そして山本有三の「路傍の石」が心に残ると言っていた。「こころ」は私のバイブル。「魔の山」は積読、何度もチャレンジしたが挫折、読めなかった。「路傍の石」は読みやすいが・・・。次は「あすなろ物語」を読んでみよう! すべてに共通するのは『心の中』だろうか!!2014/03/11
優希
62
厳しい境遇にありながらも純真さを忘れず、経済的・精神的に自立していこうとする吾一の姿に胸打たれました。ひたむきに生きるとはどういうことか教えられたような気分です。未完ながら誰もが路傍の石であると暗示している。刺さる作品でした。2023/06/08
たつや
59
こういう本を名作というんでしょうね。奉公というシステムが何となくしか分かりませんが、人間というものの尊さや強くいきる生き方を吾一を通して学べました。子供にも読ませたい本です。2016/11/25
Kircheis
54
★★★★☆ 逆境に負けずひたむきに生きる吾一の姿に共感。 時代のせいで未完のまま終わるが、できればハッピーエンドを期待したいので未完で良かったのかもしれない。 個人的には、風刺絵描きの黒田さんにもっと活躍の場を与えて欲しかった! 「かんなん、なんじを玉にす」2018/09/19